英国の統計「移民約50万人の見落とし」ヤバい背景 データは信頼できる?EUから離脱を問う火種に

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しかも、場合によっては10ポンド(約1900円)未満でチケットが買えることを考えれば、ルートンやリーズといった、ヒースロー空港(注:ロンドン西部にある英国最大の空港)よりも華やかさに欠ける地方空港から出発することはなんの問題もなかった。

そもそも、免税価格で香りつきのウォッカや、ひどく高いサングラスを買おうかどうか迷いながらヒースローで2時間過ごすのを、心から楽しんでいる人などいるのだろうか?

また、このタイミングでの業界参入にも、きわめて大きな意味があった。2003年4月に行われた、ハンガリーのEU加盟の是非を問う国民投票では、賛成票が83%だった。そうしてハンガリーの人々は、ヨーロッパ大陸のどこにでも住んで働ける自由を、翌年からほぼ無条件で手に入れられることになった。

2004年にEUに加わった国は、ハンガリーだけではない。東欧諸国では、チェコ、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロバキア、スロベニアも同年に加盟した。この8カ国は「グループ8」または「新規加盟8カ国(A8)」と呼ばれ、当時の総人口はおよそ7300万人。

これらの国の人々が強い関心を抱いていたのは、ルートンまで週末旅行に出かけることではなかった。彼らは英国への移住を視野に入れていた。

見落とされていた「地方空港」からの入国者

EU拡大に向けて、英国政府はこれらの国から英国への移入民は毎年どれくらいになるのかを予測するよう専門家に依頼した。そうして得られた回答は、「5000人から1万3000人ぐらいと予想される」だった。

だが、実際にやってきた人数はこの予測の20倍以上であり、とりわけ多かったのはポーランド人だった。2001年の国勢調査では、英国在住のポーランド出身者の数は5万8000人。それが2011年には67万6000人にまで増えていた。

予測は大幅に外れ、英国は突如として、東ヨーロッパの人々に最も人気の高い移住先となった。ウィズエアーはルートン、スタンステッド、バーミンガム、ドンカスター・シェフィールドへの新規路線を開設し、イージージェットとライアンエアーもあとに続いた。

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