天下一品の看板「こってりスープ」50年かけた進化 創業時は屋台からのスタートだった

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秘伝のスープの味は、時代に合わせて変えてきたのだろうか。

「少しずつ進化させています。創業時は屋台からのスタートでした。創業者の木村勉会長が試行錯誤しながら試作を繰り返し、『こってり』を完成させましたが、当時は材料や調理器具の入手も困難で苦労しました。1号店となる『総本店』(京都市左京区)でスープを炊いていた頃から、設備の整った工場(当初は京都市伏見区、現在は滋賀県大津市)で各店舗に供給する現在まで、スープは進化し続けています」(木村社長)

創業者は「こってりスープは私の命」

もともと木村勉会長がラーメン店を始めたのは、勤めていた会社が倒産したからだ。今から53年前の1971年、京都・銀閣寺周辺の屋台から「天下一品」の歴史がスタートした(その後に店名をつけた)。初日は11杯しか売れなかったという。当初はしょうゆ系だったが、やがて別の味を開発し始める。

「お客さまが“わざわざ来てでも食べたい”と思っていただける味を目指し、屋台を引きながら別の寸胴鍋で開発し続けた――と聞いています。主な材料は現在と同じ鶏がらで、それに野菜などを加えながらスープづくりを続け、約4年の歳月をかけて唯一無二の味『こってり』が完成しました。会長は『こってりスープは私の命』と話しています。

これまでにない味に最初は賛否が分かれたと思いますが、やがて多くの方にご支持いただくようになりました。一度食べたら忘れられない、この味を守り続けることは『天下一品』にしかできない使命です」(木村社長)

一方で、こんな感想を話す人(40代男性)もいた。

「まだ新人の頃、会社の先輩が天下一品ファンで一緒に食べにいったのを思い出しました。私は胃もたれしやすい体質で『あっさり』のメニューを選びましたが、おいしかったです」

もともと「あっさり」は、こってりが苦手な人向けに木村会長が開発したという。7割超がこってりを頼む中、「あっさり」や「屋台の味」(こってりとあっさりの中間)を選ぶ人も一定数いる。2020年からは「味噌ラーメン」を全国発売し、選択肢を増やした。

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