「AI学んでも前途多難」大学教員を諦めた彼の本音 就職には困らない一方、大学に残るのは狭き門

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では、修士課程から博士課程に進学する人は、どのような考えをもっているのだろうか。高山さんの場合は、純粋な知的好奇心が出発点だったと話す。

「博士後期課程に進学する人の中には、博士号を取得してキャリアに箔を付けたいという人もいます。海外で研究を続ける人や、大学教員になりたいと考えている人にとっては、博士号を持っているかどうかでその後が大きく変わってきます。理由は人それぞれで、それでいいと思います。

私の場合は、まずは人工知能の仕組みをもう少し知りたいと思いました。さらに大きな目標は、新たな知見を獲得することです。純粋に知を探求しているうちに、思わぬ大発見につながることで、社会的な課題を解決するケースはよくある話だと思います。

人工知能、AIの技術は、今最も注目されている分野の1つだと思います。でも、1980年代後半から1990年代前半にかけては、研究は大きな成果が得られず下火の状態でした。AIは本当に役に立つのかと言われながら研究を続けているうちに、新たな発見によって今の状況が生まれました。研究によって新たな知見を発見することに、大きな意義を感じています」

「大学に残る選択」は厳しい現状

研究を深めて新たな知見を発見したいと考えれば、そのまま大学に残って研究を続けたいと思うのではないだろうか。しかし、大学への就職は狭き門になっている。

文部科学省が今年1月に発表した「博士後期課程修了者の進路について」によると、2021年度の博士課程修了者1万5968人のうち、大学などで助教や講師として就職した人は2518人。全体の15.8%に過ぎない。

一方で、任期付きの研究職ポジションである博士研究員、いわゆるポスドクになった人が1500人いる。任期が終わればほかの大学や研究機関、企業などに応募しなければならず、不安定な雇用形態の中で研究を続けることになる。

高山さんも、引き続き大学に残って研究することも選択肢の1つにあった。けれども、やはり将来への不安があったと明かす。

「就職の道を選んだのは、ポスト面での不安もありました。情報系であれば勤務する場所などを選ばなければ大学での就職先はあると思いますが、自分がどのようなキャリアを進んでいけるのか描きづらくなっているのは間違いないです」

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