「AI学んでも前途多難」大学教員を諦めた彼の本音 就職には困らない一方、大学に残るのは狭き門

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博士課程を卒業するには、国際論文誌や国際会議で研究成果をいくつか発表したうえで博士論文に取り組む。忙しい時期には朝から夜遅くまで研究に没頭している。その際、情報系ではシュミレーション上のみの実験が多いので、研究室にずっといるわけではない。高山さんも研究は基本的に自宅で進めている。

「研究はパソコンとペンがあればできますから、研究室に集まるようなコアタイムがありません。個人の裁量に任されているところが多いと思います。ただ、コロナ禍で一時は完全にリモートになって、自宅でやる気がでないので研究室に通うという人もいました。私の場合は基本的に自宅で研究しています」

理系の単科大学である名古屋工業大学では、学部生のおよそ75%が博士前期課程に進学するという。その後は就職する人がほとんどで、そのまま博士後期課程に進む人は少ない。これは他大学の理系大学院でもほぼ同じ傾向といえる。高山さんは人工知能について深く学ぶために後期課程に進んだ。

「Web開発の分野を専門にしている人であれば、学部や博士前期課程を卒業して、企業で実践する道を選ぶケースも多いです。一方で、私が研究している分野は、人工知能を動かすときにどれくらいの性能を持っているのか、動いたときにどういう振る舞いをするのかといったことを数学的に解析する場合が多いので、基礎的な研究が重要になります。

そのためには腰を据えて、まとまった時間で取り組んだほうがいいと考えて、私は博士後期課程で学ぶ選択をしました。同級生よりも社会に出るのが遅れるという面はあるものの、マイナス面は感じません。就職活動に関してもそれほど苦労することなく、大手メーカーの研究所から内定をいただいています」

博士課程に進学した人は減少傾向

文部科学省の「令和4年度学校基本調査」によると、大学院修士課程修了者の主な進路状況は、博士課程に進学した人の割合が10.3%だった。平成6年の16.9%から減少傾向が続いている。

一方で、博士課程に在学している人の内訳は、「令和3年度学校基本調査」の推計では、修士課程からの進学者は約3万人。これに対して、社会人学生と留学生が約4万5000人と、修士課程からの進学者の1.5倍いると見られている。特に社会人学生の場合は、企業で携わっている研究開発業務と、博士課程での研究が密接に関わっているケースも多いだろう。

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