なぜ「無敵の人」が増え続けるのか、保守と革新は争うのか、人間性と能力は比例するのか。このたび上梓された『武器としての「中国思想」』では、私たちの日常で起こっている出来事や、現代社会のホットな話題を切り口に、わかりやすく中国思想を解説している。
同書の著者で、中国思想・日本思想の研究者、大場一央氏が2つの企業事件の「深層」を読み解く。
2つの企業事件と一族経営
2023年も半ばを越えた頃、2つの企業事件が社会を賑わせた。1つがビッグモーター社による保険金不正請求問題であり、もう1つがジャニーズ事務所による性加害問題である。両者の不祥事は、表面上は異なる内容に見えるが、それを惹起した要因には共通項がある。
ビッグモーター社は、保険金不正請求以外にも、副社長による「パワハラ」とおぼしき現場への圧力や、恣意的な人事異動が頻発しており、それが社内の閉塞感と不正を生む温床となっていた。ジャニーズ事務所は、圧倒的な業績をあげた創業者とその親族が、絶対的な権威として君臨しており、それが被害者や周囲の感覚を麻痺させ、数十年にわたる被害を野放しにしていた。
こうした問題が発生する要因として、「ガバナンス」が機能していないことが挙げられる。ガバナンスとは、経営陣が適正な経営を行っているか、管理監督する仕組みのことであり、これによって、経営不祥事を防止し、企業の所有者である株主をはじめ、従業員などの権利を維持する。
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