「国富でなく民富こそ国力」と喝破した孟子の真意 「実質賃金マイナス」時代に必要な王道政治と士

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岸田首相の記者会見
「実質賃金マイナス」時代に求められる政治とは (写真:SOPA Images/Getty Images)
なぜ「無敵の人」が増え続けるのか、保守と革新は争うのか、人間性と能力は比例するのか。このたび上梓された大場一央氏の『武器としての「中国思想」』では、私たちの日常で起こっている出来事や、現代社会のホットな話題を切り口に、わかりやすく中国思想を解説している。
本稿では、奈良県東吉野村で「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」を運営する思想家の青木真兵氏が同書を読み解く。

近代の行き詰まりの中で

僕たちはどう生きていけば良いのでしょうか。

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僕はこの問題意識の背景に、近代という時代の行き詰まりを感じています。この場合の近代とは有り体に言うと、工業化をベースとした国民国家の時代であり、西洋と東洋を対比させて考え、西洋は進んでいて東洋は遅れているという構図で理解される時代だといえます。

周知のとおり、日本はアヘン戦争で清が大英帝国に敗れたことに大きな衝撃を受け、危機感を募らせました。その後、アメリカの黒船が来航したことをきっかけに日本国内は二分され、佐幕派と倒幕派による内乱期に入ります。江戸幕府が倒された後は西洋文明を模倣し、天皇を中心とした国づくりをしていきます。

しかし第二次世界大戦でアメリカを中心とする連合国に敗れ、現在もなお経済、軍事的にアメリカに従属する状態が続いているといえます。ただアメリカの世界的な存在感が低下してきている今、これまでどおり西洋文明の模倣では太刀打ちできない状態に置かれていることは火を見るより明らかでしょう。

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