「国富でなく民富こそ国力」と喝破した孟子の真意 「実質賃金マイナス」時代に必要な王道政治と士

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僕も「日本人の伝統的な価値観を目覚めさせ、社会を変革するダイナミズム」を取り戻したいと考えています。しかしこの時の伝統的な価値観とは、「肉じゃがは日本の伝統料理だ」とか「万世一系の天皇家」だとかいう、近代になってつくられたフィクショナルなものではなく、古代から影響を受け続けてきた身体に染み込んでいる価値観ということなのだろうと思います。僕は山村に住みながら私設図書館活動を続け、都市と山村を行ったり来たりしながら「ちょうどよい」生活を模索していますが、東アジアの環境に暮らすことで身体に染み込んでいる価値観の存在を強く感じています。

孟子が提唱した「王道」政治

しかしその一方で、現在の中国の方と接すると、僕たちにはないバイタリティーを感じるのも確かです。今の日本社会が無気力になっているせいなのか、もともと中国社会の方がダイナミズムにあふれているのか。おそらくその両方な気がします。再び僕たちは、自分たちに合った「個」をつくっていくフェイズに入っているのだと思います。

「個」とはどのようなものを指すのでしょうか。その1つのヒントになるのが、本書でも注目されている孟子の思想です。

孟子は『中庸』の著者であるとされる子思の弟子で、子思は孔子の孫にあたります。孟子の生きた戦国時代は周という王朝による支配が崩れ、14国による群雄割拠の時代でした。中でも中国の東方にあった斉は、戦国時代に入る前から経済的な成功を収めて国を豊かにし、軍事力を整えて異民族との戦いにも勝利するなど、強国への道を歩んでいました。

この背景には努力して生産活動を行い競争に勝てば結果に結びつく自由経済や、成績の良い者が出世できる流動性の高い社会があったといいます。このような風潮が戦国時代を準備したともいえます。

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