「円安」で起こっている日本人が知りたくないこと 実質過去50年間で最も安い水準にある意味

短期的には、アメリカのインフレ率急落を祈ることが、超円安に対処するための日本の唯一の選択肢かもしれない。しかし、長期的には、日本企業の競争力を根本的に強化しなければならない。なぜなら、それが「実質」円安の根本原因だからである(「実質」円の定義と経済的意義は後述する)。円安は、日本企業が国際市場で元気をなくしているから起きているのだ。
まず、短期的な話をしよう。この1年半、円安の唯一最大の要因は、アメリカの金利と日本の金利の差である。そして、金利の上昇は、アメリカの高インフレに対するアメリカの武器である。日米金利差が大きければ大きいほど、日本からアメリカへの資金流入が増え、円安が進む。
逆に、11月10日に一時、1ドル=146円から138円まで急激にドル高になったように、アメリカのインフレ率が下がれば、アメリカの金利が下がり、円高になる。つまり、アメリカのインフレ率の数値は、日本銀行がどうこうするよりも、はるかに円に対して大きな影響を与えるのである。
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金利を上げればゾンビ企業が次々破綻する
日本銀行が円高になるように金利を上げるべきだという人がいる。しかし、四半世紀にわたるゼロ金利に近い状態が、日本の企業や政府を低金利中毒にしてしまった。現在、銀行融資の17%が0.25%以下、37%が0.5%以下の金利で行われている。
その結果、現在支払い能力があると錯覚している多くのゾンビ企業は、金利上昇を強いられると突然債務危機に直面することになる。要するに、日銀が日米金利差3.5~4%を縮めるほど金利を上げるには、経済がもろすぎるのである。
もし金利差だけが円安の理由なら、インフレと金利が正常に戻れば円は反発する可能性がある。しかし、歴史的な円安は、日本の基礎的競争力の劇的な劣化を反映したものでもある。
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