フェラーリに乗る人に補助金を払う必要はない 金持ちへのガソリン・電気代の援助は大愚策だ

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「ガソリン代補助金」の次は「電気代補助金」「ガス代補助金」……。一見「庶民の暮らしを守る」と言われるとよい政策のようだが、本当だろうか(写真:つのだよしお/アフロ)

まずは数行、落語調で読んでみてください。

「ガス屋の大将がかんかんに怒っているねえ」
「瞬間湯沸かし器が得意なんだから、それは大変でしょうな。で、どうしたんです?」
「お上がよ、電力屋ばっかり贔屓するからなんだってさ」
「お役人さんとのお付き合いが足りなかったんですかねえ……」

ガス業界の激怒も当然、補助の対象はどんどん拡大?

この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

ガス屋と電力屋の代わりに、鰻屋と天ぷら屋でも入れると古典落語の噺のようであるが、この書き出しがごく最近の事例を踏まえたバリバリの現代落語になりうるというのだから、現実の馬鹿馬鹿しさに頭を抱えたくなる。

折からのエネルギー資源価格高騰に加えて円安の進行もあって、電力料金もガス料金もここのところ上昇が著しいし、原価の上昇と価格設定のタイムラグを考えると今後も上昇することが予想される。

岸田文雄首相は、10月3日の施政方針演説で特に電気代に触れて「電力料金負担の増加を直接的に緩和する、前例のない思い切った対策を講じる」と述べたのだが、ガス代への言及はなかった。これに対して、国会でもツッコミが入ったし、ガス業界からも声が上がった。

「庶民の生活に影響の大きい電力料金」がコスト上昇をフルに反映しないように対策が施されるとしたら、一見喜ばしいことのように思う人がいるかもしれない。

だが、これはガス業界から見ると大変な事態だ。エネルギー価格の上昇と円安を反映したコストアップには電力業界と同じように苦しんでいるのに、電力料金だけが政府の補助を反映して下がるのだとすると、ガス業界は競争上多大な不利を被る。それこそ、日本列島全体が「オール電化」になりかねない(大げさだが)。

その後の報道を見るとガス料金に対する措置も検討され実施される見込みのようだ。詳細には興味の湧かない話だが、それは、そうなるだろう。

そして、この種の価格に対する対策は、すでにガソリンに対して大規模に実施されている。他の品目はどうだろうか。対象はさらに拡大しうるのではないか。

次ページ近視眼的な政策をとっているとどうなるのか?
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