11月8日のアメリカ中間選挙が近づいてきた。そこで、今回は小説仕立てで中間選挙直後の民主党・共和党両陣営の舞台裏を妄想してみた。11月は、それと同時並行して、世界をあっと言わせるようなことが起きるかもしれない(なお、この物語は純然たるフィクションであり、現実との類似は偶然の所産によるものです)。
中間選挙は共和党が下院多数、民主党は「善戦」?
Part1:起
時計の針は深夜12時を回ろうとしていた。12日後の11月20日には、80歳の誕生日を迎えるその老人は、食い入るようにテレビの画面を睨んでいる。
普段なら午後9時には寝てしまう習性なのだが、今宵の老人は一種の「戦闘モード」に入っている。それは長らく、政治の世界に身を置いてきたことによる習性なのかもしれなかった。
部屋の中に控えているロン・クレイン首席補佐官が老人に声をかけた。
「選挙結果はほぼ予想通りです。大統領、そろそろお休みになられたほうがよろしいのではないでしょうか?」
老人ことジョー・バイデン大統領は言った。
「すべて事前の世論調査通りだな。2016年と2020年の大統領選挙では、世論調査が思い切り外れて私も驚いた。しかし2018年の中間選挙では、世論調査がほぼ当たっていた。今回も中間選挙だから、世論調査を当てにしていいらしい。要は『あの男』が出ているときは、有権者は正直に答えてくれなくなる。そういうことのようだな」
「そのようです。今年の中間選挙では、残念ながら下院はわが党が10議席ほど下回るようですが、上院は大接戦、最終的には今までと同じ50対50に落ち着く見込みです」
「春頃に予想していたよりはずっとマシな結果だよ。これなら来年も何とかやっていける」
「もちろんです。大統領」
「明朝までに、記者会見の予定稿を用意しておいてくれないか。私ももうすぐ寝る」
クレイン補佐官は静かに立ち上がり、オーバルオフィス(大統領の執務室)を出ていった。しかし大統領は、なおも椅子に深く腰掛けたままでCNNの開票速報を見つめている。ややあって、老人は不意に大きな声をあげた。
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