11月のアメリカ中間選挙と世界は大波乱になる?! 空想と妄想に満ちた「政治小説」を作ってみた

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Part2:承

翌11月9日朝、連邦議会議事堂のミッチ・マコーネル共和党上院院内総務の部屋に、ケビン・マッカーシー下院院内総務が入ってきた。

「おお、次期下院議長殿のお出ましだな」
 そう言うと、マコーネルがコーヒーを勧めた。
「おいおい、気が早いよ。確かに下院ではわれわれが勝てたが、お祝いは年が明けて第118議会が始まる来年の1月3日まで待ってほしいものだな」。マッカーシーはそう言って、コーヒーを一口すすった。

「まあ、そう言うな。下院で多数が取れれば、与野党の力関係は一気に変わる。来年はもう民主党のやつらに好き勝手はさせない」とマコーネルは言う。

「もちろんだ。あのいまいましいナンシー・ペロシ(議長)から、下院のハンマーを奪えるだけでも胸がすく思いがするというものさ。いや、そんなことよりも問題は上院のジョージア州だ。まだ決着しないらしいじゃないか」

マコーネルはくっくっと笑いながら言った。
「想定の範囲内さ。ジョージア州には、50%の得票がない場合は上位2者による決選投票を行う、という州法がある。そして今回も、第三政党であるリバタリアン党の候補者が5%程度の支持を得ているから、どの道、民主党現職のラファエル・ワーノックの票は5割に届かない。最後は必ずわれらがハーシェル・ウォーカー候補との決選投票となるはずだ」

「ウォーカーはいろいろ問題ありの人物だが……」
「まあ、そう言うな。今や、ああいうMAGA候補(Make America Great Againの略。転じてトランプ前大統領に心酔している支持者たちを指す)じゃないと、共和党の候補者にはなれないのだからな。そして『あの男』は、ああいうタイプがお好みときている」

「となると、決戦投票は12月6日だな。ネバダ州は民主党が取るけれども、ペンシルベニア州とウィスコンシン州はわれわれが勝てそうだ。これで議席数は共和党50対民主党49。ジョージア州を取れれば、上院もわれわれが多数になるじゃないか。ミッチ、あなたもMinority Leader(少数派院内総務)からMajority Leader(多数派院内総務)に戻るチャンスだぞ!」

先を読むマコーネル院内総務

下院議長が絶大な権限を持つ下院とは違って、上院では多数党の院内総務が真の権力者となる。長らくその地位にあったマコーネルは、その旨味を十分に知っている。が、アメリカ政治の超ベテランは、若いケビン・マッカーシーよりも政局の先を読んでいた。

「まあ、待て。ジョージア州のルールは2年前にも発動された。そのときは補欠選挙もあったから、2つの上院決選投票が同時に2021年1月5日に行われた。2議席とも元は共和党が現職だったから、悪くても1勝1敗、良ければ2勝0敗とわれわれは踏んでいた。ところが信じられないことに、両方とも民主党に持っていかれてしまった」

「そう、それで上院が50対50になって、われわれは少数派になったのだ」
「なぜそうなったか。あのとき、共和党候補者は2人とも『2020年選挙は盗まれた!』と訴えていた。両方とも『あの男』に心酔していたからね。だがそんなことを言われたら、心ある共和党員の一部は棄権に回る。そのわずかな差で、民主党に2議席とも取られてしまった。今回も同じことが起こるのではないかな」
「おいおい、だったらそれを止めなければ……」

「いや、放っておいても『あの男』がジョージア州に乗り込んで同じことを言うさ。それは止められない。そうなれば、ジョージア州の議席は僅差で持っていかれる」
「その場合、上院は50対50で今のままとなる。上院は取れないじゃないか」

「そのほうがいいと思わんかね?」
マコーネルはにやりと笑った。
「上下院とも共和党が押さえたら、われわれにも責任が生じることになる。『ねじれ議会だから何事も決められません!』と言っているほうが、はるかに気が楽だと思わんかね。来年の景気は悪くなることが今から見えているし、インフレだって止まりそうにない。だったら野党でいるほうが有利じゃないか。2024年を迎えるにも、そのほうが好都合だ。それから『あの男』の力を削ぐためにもね」

マコーネルの深慮に、マッカーシーは意表を突かれていた。
「あなたは、あのドナルド・トランプを追い落とすつもりなのか?」
「そうとは言わん」と、マコーネルは言った。「ただし私は古き良き共和党を取り戻したい。あのMAGAの狂信者どもからな。これは絶好の機会だと君も思わんかね?」

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