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東京都が発行した「レジリエンス債」が、「発行額の7倍」に相当する投資家需要を獲得――欧州の金融市場で注目された理由とは

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ユーロ市場でのレジリエンス債起債に携わった、東京都財務局の橋口牧子公債課長(中央)(撮影:梅谷秀司)

2025年を振り返ると、気候変動の影響による山火事や記録的猛暑、局地的豪雨が相次いだ。東京都内でも大雨による被害が頻発し、7月と9月の豪雨では目黒区でおよそ450件に上る床上・床下浸水が確認された。

こうした中、自治体の防災対策での新たな財源調達の手法として注目されているのが、資本市場の活用だ。東京都は25年10月、「TOKYOレジリエンスボンド」と称したユーロ建て債券を発行した。発行額は3億ユーロ(約528億円)。ヨーロッパ諸国の中央銀行や政府系金融機関、アセットマネジメント会社などが債券を購入した。

調達資金は、中小河川の整備や防潮堤のかさ上げといった「強靭化(レジリエンス)」に資する事業に充当される。TOKYOレジリエンスボンドは、国際NGO「クライメート・ボンド・イニシアチブ(CBI)」が定めたレジリエンスタクソノミー(分類基準)に適合した債券として世界初の起債の事例となった。資金使途としている事業が、気候変動による被害を防ぐために有効な対策であることが、国際金融市場でも評価された形だ。

気候変動の「適応」分野に資金呼び込み

東京都が「TOKYO強靱化プロジェクト」を打ち出したのは、関東大震災から100年を迎える前年の22年だ。40年代を見据え、風水害や地震、火山噴火などの自然災害に強い都市を目指す施策である。なかでも、気候変動によって激甚化する風水害への備えの強化は待ったなしだ。

東京都は平均気温が2度上昇し、降雨量が現在の1.1倍に増えるとともに、最大約60センチメートルの海面上昇が起こるといった厳しい条件のもとでも、安心して暮らせる都市を目指している。そのための強靱化事業の総規模は40年代までに17兆円にのぼる。

今回のユーロ市場での起債には、資金調達にとどまらず、「TOKYO強靱化プロジェクト」の存在を世界に知らしめる狙いもある。東京都財務局の橋口牧子公債課長は、「東京都が強靱化の取り組みをしていることを、海外市場での債券発行を通じて世界にアピールしたい」と意気込む。

25年11月にブラジル・ベレンで開催された、国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)の正式文書では、気候変動による被害を防いだり軽減したりする「適応」と呼ばれる分野への資金を、少なくとも3倍に増やす努力目標が盛り込まれた。橋口課長は「東京都としても、レジリエンス分野での債券を発行することで、資金の流れを適応分野に呼び込んでいきたい」と語る。

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