さて、ここで現実を少々離れて空想してみよう。「近視眼的な自分の損得」しか考えない国民で構成される仮想の国を考えてみよう。
価格に働き掛ける経済政策は金持ちにメリット大
この国は、日本でも、どこかの外国でもない、あくまでも架空の国家だ。国民は、目先の変化が「自分に得かどうか」だけを考える。役人も国家のためではなく、自分個人の利益を考えるし、政治家は支持率、人気、選挙、個人財産の増減など、自分の損得にかかわる目先の変化だけを追うと考えてみよう。
先の、電力料金への「思い切った対策」のようなケースはどうか。電力料金の上昇が生活を圧迫していると強く実感するような「貧者」(架空の国の話なので少々乱暴な言葉遣いを許してほしい)は、毎月支払う電力料金の低下を「毎月1000円以上助かった」などと喜ぶ。
一方、バリバリに空調が効いていてキラキラの照明の豪邸に暮らす「金持ち」も、声には出さないだろうが「今月は優に1万円は支払いが減るな」などと気づいて、まあまあ悪い気はしない。
価格に働きかける経済対策は、絶対額では、しばしば貧者よりも金持ちにとって、よりメリットが大きいのだ。
筆者は、どちらも乗ったことがないが、(金持ちが乗る)フェラーリのほうが(幅広い層の国民が乗る)カローラよりもガソリンを食うのだろうから、ガソリン価格への補助はフェラーリの乗り手に対するメリットのほうが大きい。
一方、純粋愚民国家の役人について考えてみよう。電力ムラを担当する役人は政策に電力料金対策を入れることができて、政策に関与できたことが人事評価につながるだろうし、電力会社からは褒められるだろう。同様の実績を積むと将来の就職に有利であるにちがいない。個別の価格対策には大いに関与する価値がある。
今回は一歩出遅れたかもしれないが、ガス業界担当の役人にとっても事情は同じだ。ガス料金対策を取りまとめると、業界も政治家も褒めてくれるだろう。
その他の、業界を担当する役人さんにとっても事情は一緒だ。自分の担当業界で国民受けのいい政策を提案できるとプラスの得点が期待できる。
では、政治家はどうなのか。電気を使っている国民が愚民なのだから電力料金の引き下げは貧者からも金持ちからも歓迎され、支持率向上につながるはずだ。これは結構なことだ。やりがいがある。
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