「円安」で起こっている日本人が知りたくないこと 実質過去50年間で最も安い水準にある意味
前述の通り、実質実効為替レートは過去50年間で最も安い水準にある。実質実効為替レートとは、日本の貿易相手国すべてに対する円のレートを、日本とそれ以外の国の物価動向の違いによって調整したものである。
なぜそれが重要なのか、説明しよう。
まず、実質実効為替レートは、日本の輸出企業が海外の顧客に請求できる価格を測るものである。円安になると、日本企業はよほど安い価格でないと輸出ができなくなる。品質や革新的な機能によるプレミアム価格を要求することができなくなるのだ。
さらに悪いことに、国際競争力のあるスマートフォンのような必需品を十分に生産することができなくなっている。同時に、実質的な円安は、日本の消費者や中小企業が、食品やエネルギーといった輸入集約型の製品に対して、より高い価格を支払わなければならないことを意味している。
実際、円安は進行しており、金利差がある場合、10~20年前に比べて現在は20ポイント程度円安になっている。つまり、仮に金利差が2ポイントに戻ったとしても、2000年〜2012年の円/ドルレートは100円前後であったのに対して、現在は120円前後である。
円安になっても日本企業の競争力は低下
最も心配なのは、円安になっても、日本企業の競争力が低下していることだ。かつて日本は、今よりずっと円高だった時代にも慢性的な貿易黒字を享受していた。
しかし、この10年以上、日本は慢性的な貿易赤字に苦しんでいる。この10年間、実質円レートは1994年から2012年の間よりも30%安くなっているにもかかわらず、である。日本企業は、加速するランニングマシーンの上で衰弱した人のようなもので、どんどん速く走ってみても、ついていくのが難しいのである。
エレクトロニクスのようなかつてのスーパースター産業でさえ、今や慢性的な赤字に陥っている。エレクトロニクスは輸出が減り、輸入が増える。2000年当時、日本の電機メーカーは7兆円の貿易黒字を計上しており、これはGDPの1.3%に相当する額だった。それが2018年には1.2兆円の貿易赤字に転落した。
さらに、これらの企業は、コストの低い他国で生産しても競争することが困難になっている。2008年から2020年にかけて、世界の電子機器売上高は40%急増したにもかかわらず、日本の電子機器ハードウェアメーカー上位10社は、いずれもその間に世界売上高が低迷している。さらに、2010年から2020年にかけて、日本のエレクトロニクス企業の世界総売上高は30%も急落した。
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