日本の1人当たりGDPを大きく下げた「真犯人」 大規模緩和からの政策転換を日本再生の第一歩に

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日銀
物価が上がっても賃金は上がらなかった(撮影:今井 康一)
大規模金融緩和は、もともと日本を活性化できるものではなかった。2022年の物価高騰の中で、その問題点が誰の目にも明らかになった。物価目標の取り下げと金利抑制策の停止によって金融政策を転換し、日本再生への手がかりをつかむ必要がある。
昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第85回。

物価目標を取り下げよ

2022年12月20日に日本銀行が長期金利の上限を引き上げた。これは金融緩和の出口に向かう政策ではないとされているが、すでに、金利をはじめとするさまざまな指標が大きく動き始めた。これは、日銀が2013年4月に開始した大規模金融緩和(通称「異次元金融緩和」)の出口に向かっての動きの始まりと捉えるべきものだ。では、いかなる方向を目指すべきか?

大規模金融緩和は、2013年1月22日に安倍晋三首相(当時)が白川方明日銀総裁(当時)と結んだ「政府・日銀の政策協定(アコード)」をもとにしている。

ここで、「目標を消費者物価の前年比上昇率で2%」とし、「できるだけ早期に実現することを目指す」と明記された。

しかし、これは、もともと実現不可能な目標であり、仮に実現したとしても、経済活性化にはつながらない無意味な目標であった。

これが採用されたのは、当時支配的であったリフレ派の主張による。

日銀はこれに抵抗したが、日銀法改正という脅しをちらつかされて、組織防衛のために認めざるを得なかった(白川方明『中央銀行』2018年、東洋経済新報社による)。

実現不可能であり、経済活性化につながらない目標であることが、その後、明らかになった。

異次元金融緩和では、この目標を2年以内に達成するとした。しかし、実現できなかった。年平均で消費者物価上昇率が1%を超えたのは2014年だけだが、これは消費税率引き上げの影響であり、それを除けば、2021年まで、どの年も1%未満だった。

もともと、金融緩和で物価が上がるはずはなかったからだ。

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