日本の1人当たりGDPを大きく下げた「真犯人」 大規模緩和からの政策転換を日本再生の第一歩に

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どのようなメカニズムで、大量の国債購入が物価上昇につながるかについての納得的な説明はなかった。 

「人々の期待が変われば物価が上がる」とも言われた。しかし、それも働かなかった。

このように、物価を金融政策の目標とするのは適切ではないことが明らかになった。これは取り下げなければならない。

より大きな問題は、賃金が上昇しなかったことだ。

大規模金融緩和が導入されたとき、「物価が上がれば賃金も上がる」と説明された。しかし、実際には、2013年以降、実質賃金は下落し続けた。

2022年に生じた世界的インフレは、日本にも輸入されて国内物価を高騰させた。しかし、賃金の伸びはそれに追いつかず、実質賃金は大きく低下した。

「物価が上がれば賃金も上がる」との説明は、そうならなければ、賃金分配率が大きく下がってしまうということを論拠にしていたので、物価上昇の原因が何であったとしても適用できるはずだ。

だから、2022年の物価高騰についても、賃金は上がるはずだった。しかし、そうはならなかった。これによって、大規模金融緩和側の論理が誤りであることが、誰の目にも明らかになった。

YCCをやめて、金利機能を復活させよ

政策手法では、イールドカーブ・コントロール(YCC)による長期金利のコントロールを停止すべきだと筆者は考えている。

これは、2016年9月に導入されたものだ。それに先立つ2016年1月に、マイナス金利が導入され、民間の金融機関が日銀に預ける当座預金残高の一部にマイナス0.1%の金利が適用された。これによって金利が急低下し、10年物国債の利回りはマイナスになった。20年、30年の超長期国債の利回りも低下した。金融機関は利ザヤを稼ぐことが難しくなった。

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