大規模金融緩和によってもたらされた低金利と円安というぬるま湯的環境のなかで、日本企業は付加価値を増大させる努力を怠った。
その結果が、1人当たりGDPの推移に明確に表れている(図表1参照)。
2012年から2022年の間に、アメリカの1人当たりGDPは45.3%増加した。そのほかの国の増減率を見ると台湾は67.0%増、韓国は31.9%増、ドイツ、フランスは10%増だ。そして、日本は30%減少した。
貴重な10年間を日本は無駄にした
図表1は、貴重な10年間を日本が無駄にしてしまったことを、はっきりと示している。この図表こそが、大規模金融緩和の成果を最もわかりやすく示す成績表だ。
(外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
日本が成長せず、他国が成長した結果、日本の相対的な地位は、信じられないほど低下した。2012年に、日本の1人当たりGDPは、アメリカとほとんど同じだった。そして、カナダ(図表には示していない)、アメリカについで、G7で第3位だった。しかし、2022年には、日本の1人当たりGDPはアメリカの45.7%でしかない。
2012年に日本はドイツ、フランス(図表には示していない)、イギリスより1割以上高かったが、いまは7割程度でしかない。
2012年に日本はイタリアより4割高かったが、いまはほとんど同じで、G7での最低国を争っている。
2012年に日本は台湾の2.3倍だったが、2022年には追い抜かれた。韓国も、近い将来に日本を追い抜くだろう。そうなれば、図表1に示した国の中で、日本は最低順位になる可能性が高い。
そして、日本は先進国の地位から滑り落ちる。この状態を何とか阻止ししなければならないが、そのためには、金融政策の大転換が不可欠の条件だ。
いまや、大規模金融緩和政策の誤りは明白だ。しかし、政策転換ができれば、条件は大きく変わる。日本はまだ、回復する潜在力を持っている。金融政策の転換がその第一歩になることを望みたい。
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