「日本の民主主義」は中国思想と深く関わっている 儒教の精神は「封建主義」ではなく「個の確立」だ

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「日本の民主主義」が中国思想と深く関わっているのはなぜか。気鋭の論客たちが徹底討議します(写真:TOMO/PIXTA)
なぜ「無敵の人」が増え続けるのか。なぜ保守と革新は争うのか。このたび上梓された大場一央氏の『武器としての「中国思想」』では、私たちの日常で起こっている出来事や、現代社会のホットな話題を切り口に、わかりやすく中国思想を解説している。
中野剛志(評論家)、佐藤健志(評論家・作家)、施光恒(九州大学大学院教授)、古川雄嗣(北海道教育大学旭川校准教授)など、気鋭の論客の各氏が読み解き、議論する「令和の新教養」シリーズに、今回は大場一央氏も参加し、同書をめぐって徹底討議。今回はその前編をお届けする。

「功利」を克服するために改良されてきた中国思想

中野:最初に大場さんから、ご著書『武器としての「中国思想」』の趣旨や執筆の意図などについて、お話をお聞かせ願えますでしょうか。

『武器としての「中国思想」』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

大場:わかりました。まず、この本を書いた動機は、基本的には中国思想が現代において、はたして使えるのかという、しごく単純なものです。また、「個の確立」が社会を成立させて動かすのである、というテーマのもとで執筆しております。

思想以前の「功利」というものが社会を覆って、つねに人々を動かしている。その中でそれを克服するために思想というものがいかに誕生して、どのようにブラッシュアップをされていったのか。

ここにおいて大事な思想史として、古代の孔子や孟子は政治的な議論と、修養による「個」の確立を説きましたが、中世の漢や唐までは政治的な議論ばかり注目されていました。

しかしながら、近世に登場した朱子学、陽明学になって、1人ひとりの生き方を通じて、どのように世界にアプローチを仕掛けていくかという問題意識に移行しはじめます。そこで初めて思想的な問題において、「個」の確立に焦点を当てるという、流れがつくられました。こちらを1つの筋として、本書では執筆をしております。

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