「倍速消費」並みになった合意形成のスピード感 政策が次々と「検討なく」決められている理由

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国会議事堂
自滅的とも思える政策を、政府が頑迷に推進する理由はどこにあるのでしょうか(写真:リュウタ/PIXTA)
本来であれば格差問題の解決に取り組むべきリベラルが、なぜ「新自由主義」を利するような「脱成長」論の罠にはまるのか。自由主義の旗手アメリカは、覇権の衰えとともにどこに向かうのか。グローバリズムとナショナリズムのあるべきバランスはどのようなものか。「令和の新教養」シリーズなどを大幅加筆し、2020年代の重要テーマを論じた『新自由主義と脱成長をもうやめる』が、このほど上梓された。同書の筆者でもある中野剛志(評論家)、佐藤健志(評論家・作家)、施光恒(九州大学大学院教授)、古川雄嗣(北海道教育大学旭川校准教授)の各氏が、「社会的な合意形成」と「自由民主主義」について論じた座談会の第1回をお届けする(全3回。第2回目はこちら)。

「期間限定の独裁」という合意形成の放棄

中野:昨年(2023年)末に佐藤さんは「論壇チャンネル『ことのは』」で「年末スペシャル:佐藤健志が語る『日本の危機』」という講義をされましたね。

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そこで指摘されていた問題は、この「令和の新教養」研究会の新刊『新自由主義と脱成長をもうやめる』の内容にもつながる重要な問題だったと思います。

今回は、佐藤さんが提起されていた現代の「自由民主主義」のあり方の問題を中心に議論してみたいと思います。まずは佐藤さんから、ご講義の要点をあらためてお話しいただけますか。

佐藤:政治が安定的に機能する大前提は、「国の方向性はどのようなものであるべきか」「そのために必要な政策は何か」といった点について、社会的な合意が成立していることです。とりわけ自由民主主義は、絶えざる合意形成の努力なしには機能不全に陥る。ところが現在の日本の政治は、まさにこの努力を放棄しているように見えます。

日本を救う主権への回帰』というオンライン講座(経営科学出版)で詳細に論じたのですが、1990年代後半あたりから「根回しなどせずに押し切るのがリーダーシップ」という考え方が流行りだした。その根底にあるのは、改革路線がうまく行かないことへの苛立ちです。

平成の日本では「国をいっそう発展・繁栄させるためには、抜本的な改革が必要」という発想が支配的でした。けれどもそのような改革は、確実に「痛み」を伴います。言い換えれば今まで以上に、入念な根回しによる合意形成が求められる。

ところが実際には逆のことが起きた。改革路線が空回りを続けたせいもあって、「根回しをやっていたら何もできない。真のリーダーなら、反対を排除して押し切れ」となったのです。これと関連して、民主主義とは何かをめぐる認識まで変わってきた。

つまり民主政治を、〈期間限定の独裁支配〉の繰り返しのごとく見なす傾向が強まったのです。「選挙で選ばれたんだから、リーダーは好き放題にやって構わない。不満があれば、次の選挙で追っ払えばいいんだ」というアレですよ。しかしこれでは、合意形成も何もあったものではない。

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