民主主義が機能するための条件
古川:民主主義が機能するためには、多様な集団が意見を主張し合う多元主義が必要で、そのためには中間団体の再生こそが不可欠だというのがリンドの主張です。中間団体とは、国家と個人との中間に存在するさまざまな共同体のことで、地域のコミュニティや労働組合、農協や漁協などの職業団体、教会などの宗教団体がそれに当たります。
リベラルな社会、つまり自由で民主的な社会が成り立つためには、その条件として、自律的な中間団体が多様に存在することこそが必要だ、という主張は最近よく見られます。それだけ危機感が高まっているのでしょう。たとえば、パトリック・J・デニーンの『リベラリズムはなぜ失敗したのか』(2018年、邦訳2019年)もそうです。
デニーンは、リベラリズムというイデオロギーこそが、むしろリベラルな社会の前提条件を切り崩してきたのだと批判していますが、その最たるものが中間団体です。中間団体は本来、国家と個人との間に挟み込まれたクッションのようなもので、それによって、個人は国家の専制的な権力から守られますし、自分の意見を政治に反映することもできます。
それがなくなってしまうと、個人は寄る辺を失って国家に依存し、従属するほかなくなります。そこに到来するのが全体主義です。