インドがウクライナ侵攻に「NO」と言えない事情 安全保障環境ゆえに軍事面でロシアと深い関係

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2022年2月25日、国連安全保障理事会で行われたロシア非難決議案の採決で、賛意を表明するトーマスグリーンフィールド米国連大使(前列左から2人目)ら(写真・EPA=時事)

2022年2月24日、国連安全保障理事会に提出されたロシアのウクライナ侵攻を非難する決議案は、ロシアの拒否権発動によって葬り去られた。棄権した国も3つあった——中国、アラブ首長国連邦(UAE)、そしてインドである。

軍事面で不可欠なパートナー

この3カ国は、国連総会の緊急特別会合開催を求める採決でも棄権に回った(ロシアも反対したが、手続き事項に関しては拒否権の対象とならないため、賛成多数で採択された)。民主主義国であり、近年は「自由で開かれたインド太平洋」構想に参加し、日本、アメリカ、オーストラリアとともに「QUAD(クアッド)」の一角を占めるインドがなぜロシアの軍事侵攻を非難しないのか。

その最大の理由は、インドがロシアに対して軍事面で不可欠なパートナーであることだ。金額ベースで見ると、2000年から2020年にかけてインドが外国から輸入した兵器のうち66.5%がロシア製だった。インド軍の超音速巡航ミサイル「ブラーモス」はロシアと共同開発したものだし、インド海軍唯一の空母「ヴィクラマディティヤ」はロシア海軍の空母だったものを購入して改装したものだ。

2018年にはアメリカの懸念をよそにロシア製地対空ミサイル「S400」の導入を決め、2021年11月には実際に供給が始まった。近年インドは兵器調達先の多様化を進めており、米欧やイスラエル製も増えているものの、既存の兵器のメンテナンスや弾薬・各種部品調達の必要性を踏まえれば、ロシア頼みの状況を変えることは容易ではない。

インドは隣国との間で国境問題や領土問題を抱えており、防衛力の整備をおろそかにするわけにはいかないという事情がある。北の中国とは2020年に国境で軍事衝突が発生し、双方に死者が出る事態にまで発展した。西のパキスタンとは、過去3度にわたり戦火を交えてきたほか、カシミール地方をめぐり対立が続いており、過激派によるテロにも悩まされている。中国のインド洋進出を受けて、海軍力の増強も進めている。インドも今回のウクライナ情勢を憂慮しているものの、自国の安全保障を考えればロシアとの良好な関係を損なうわけにはいかないのだ。

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