ウクライナ軍事侵攻で露呈した「NATO」の体たらく 事態に対応できるのか疑問の声が出ている

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ロシアによるウクライナ軍事侵攻にNATOがどう対応するか、あるいはできるのかに注目が集まっている(写真:Tyler Hicks/The New York Times)

ヨーロッパでは新たな紛争の最前線が形成されつつある中、北大西洋条約機構(NATO)が効果的に対応できるのかどうか、あるいは、そもそも対応できるのかどうかさえも疑問視されるほど、リスクが高まっている。

ウクライナに侵攻し、迎合的なベラルーシに軍隊を配備したロシアは、突然、バルト諸国を含むいくつかのNATO諸国の国境まで軍事力を拡大している。

NATOにとって東側の国境防御が困難に

多くの専門家が予想しているように、ロシアがウクライナの占領、およびベラルーシの基地を維持することに成功した場合、ロシア軍はバルト海とポーランドの国境からスロバキア、ハンガリー、ルーマニア北部まで広がり、NATOにとって東側の国境防御が著しく困難になる。

そして、リトアニアとポーランド間の長さ約60マイルの細い回廊だけが、ベラルーシのロシア軍と、通常弾頭あるいは、核弾頭を装着するミサイルが充満し、ヨーロッパ中枢に容易に発射することができるバルト海に面したロシア領カリーニングラードとを隔てるものとなる。

「NATOのリスクレベルは、突発的に非常に高まった」と、ジャーマン・マーシャル・ファンド(GMF)のブリュッセル事務所を率いる元アメリカ政府高官、イアン・レッサー氏は話す。「黒海、サヘル、リビア、シリアなど、ヨーロッパやその他の地域でロシア軍と衝突する可能性は危険であり、今後数年間は問題になるだろう」。

元イギリス外交官で、欧州改革センター(CER)で外交政策を担当するイアン・ボンド氏は、「これはNATOにとってすべてを変えるものだ」と見る。「ロシアの狙いは、ヨーロッパの主権国家であるウクライナを消滅させることだ。今、私たちはすべてを懸念する必要があり、再び(すべてに)真剣に取り組む必要がある」。

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