ウクライナ軍事侵攻で露呈した「NATO」の体たらく 事態に対応できるのか疑問の声が出ている
かつて、ドイツのフルダ峡谷は冷戦の戦略家たちにとって悩みの種だった。ワルシャワ条約機構によって戦車が東ドイツからライン川へ送られるのを防ごうと、アメリカ軍がこの地を厳重に警備していたからだ。今回懸念されている場所は、ポーランドとリトアニアを結ぶ狭い隙間である「スヴァウキ回廊」だ。ここが占領されれば、バルト三国はNATOのほかの国々から切り離されることになる。
この回廊は、ベラルーシとカリーニングラードを切り離している。カリーニングラードはロシアのバルチック艦隊の司令本部であり、ソ連崩壊時にロシアの飛び地となった場所だ。ブルッキングス研究所のロバート・ケーガン氏は、ワシントンポスト紙のコラムに寄稿し、「プーチンがベラルーシからカリーニングラードに直接アクセスすることを要求する可能性は十分にある」と指摘した。
バルト諸国をNATOから切り離そうとしている
「しかし、それもまたロシアの新戦略の一部にすぎない。ロシアは、NATOがバルト諸国を保護できる望みはもうないことを示し、バルト諸国をNATOから切り離そうとしている」と同氏は書いている。
ボンド氏は、「ポーランドへの脅威は今や深刻化している」と語り、「アメリカはポーランドに2大隊を早急に配備すべきであり、バルト三国への配備も強化すべきだ」としている。
2016年、NATOはポーランドとバルト3国に大隊を配備することに初めて合意した。「抑止防衛体制の強化」として知られるこの大隊は、それぞれ約1100人の兵士で構成されており、戦闘力は高いが規模は小さい。そのため、長期間にわたりロシアの進出を食い止めるというよりも、トリップワイヤ(仕掛け線)のような役目を果たしてきた。
NATOは2014年、現在はトルコの指揮下にある「高高度即応統合任務部隊」も立ち上げた。NATO主権への脅威に対する短期決戦を想定して立ち上げられた同部隊は、約5000人の陸上旅団で構成されている。航空・海上・特殊部隊の支援により、30日以内にさらなる増援を配備できる体制となっている。