ウクライナ軍事侵攻で露呈した「NATO」の体たらく 事態に対応できるのか疑問の声が出ている

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だが、より小規模な部隊は、基本的に実戦は未経験である。さらに同部隊が尖兵を務めるより大規模な応戦部隊も、ウクライナに侵攻したロシアの部隊のわずか4分の1に過ぎない。大規模な部隊は2002年に結成され、迅速に展開されることを意図されていた。だが、4万人の構成員はそれぞれ自国を拠点にしており、召集には時間がかかる場合がある。

またウクライナに武器を提供し、ロシアへの反撃や抵抗運動を応援するとのNATO加盟国の約束についても疑問があがっている。たとえNATOの兵士ではなく請負業者が輸送したとしても、空路、鉄道、陸路でウクライナに武器を提供しようとする試みは、ロシア政府によって妨害されたり阻止されたりする可能性がある。

それに、ロシア軍が国境の向こうで配備されていることを知りながら、あえて危険を冒して抵抗運動を支援しようとする国がはたしてあるだろうか。

総じて、新たな脅威はEU、およびNATOは防衛に関する協力をさらに深めるべきであるというロジックを強化するだろうと、レッサー氏は言う。「両者は政治的な立場や信仰上の違いを乗り越えて関係を結び直すことになるだろう」と同氏は指摘する。

トランプ氏「復活」に対する懸念

経済制裁、サイバーレジリエンス、エネルギー安全保障、情報戦などといったNATOの得意分野をめぐってEUと協力することは、両組織にとって必ず有益となるだろうと同氏は言う。EUの27の加盟国のうち21はすでにNATOに加盟しており、スウェーデンやフィンランドなどそうでない国も緊密な同盟国であるからだ。

「われわれにはアメリカの助けが必要だ」とボンド氏は言う。「だが、ヨーロッパの独立性とさらなる自主性の理念を放棄するべきではない」。ヨーロッパでは、アメリカのバイデン大統領が2024年に再選を果たせないのではないか、あるいは出馬を見送るのではないかという懐疑的な見方もある。代わりに、ドナルド・トランプ前大統領や、同氏のより孤立主義的で自国第一主義的な理念に共鳴する共和党の候補が就任するという懸念があるのだ。

「その場合、ヨーロッパはきわめて脆弱な立場におかれる。そのため、軍事費や効率性を増強し、実際の機能上のニーズを満たす必要がある」とボンド氏は言う。「これらはただの理想論ではなく、今すぐ必要なことだ」。

(執筆:Steven Erlanger記者)

(C)2022 The New York Times Company

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