インドがウクライナ侵攻に「NO」と言えない事情 安全保障環境ゆえに軍事面でロシアと深い関係

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インドとロシアの密接な関係は冷戦期にまでさかのぼる。「非同盟」を掲げてきたインドだが、米中接近や中国・パキスタン関係の強化という事態を受けて、1971年には当時のソ連との間で軍事同盟的性格の強い「平和友好協力条約」を結んだ。1979年にソ連がアフガニスタンに侵攻した際には、翌1980年1月に開かれた国連総会の緊急特別会合でソ連を事実上支持するという、今回の先例とも言える立場をとったこともあった。カシミール問題でインドに不利な決議案が安保理に提出された際、拒否権を発動して不採択に導いたのはソ連だった。

この関係はソ連が崩壊してロシアになってからも続き、両国は軍事以外にもエネルギー(原発)、科学技術、宇宙開発といった分野で協力を進めてきた。インドは日本と「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」を構築しているが、ロシアとは「特別かつ特恵的(privileged)な戦略的パートナーシップ」とさらに踏み込んだ関係と位置づけている。BRICSやインド・中国・ロシア3カ国会議、上海協力機構(SCO)といった多国間の枠組みでの協力もある。

プーチン「インドの外交哲学はロシアと似ている」

ロシア側もインドを重視してきた。プーチン大統領は2021年11月の外交演説でインドを「多極世界のなかで独立し、強固な中心のひとつ」であり、「(ロシアと)よく似た外交における哲学とプライオリティを持っている」と評した。コロナ禍によって各国の首脳外交は激減するなか、2020年2月からの2年間でプーチン大統領が外国に出たのは3回。スイス(2021年6月のバイデン米大統領との会談)と中国(2022年2月の北京冬季五輪開会式出席)、そしてインド(2021年12月)だった。

このときの訪問では、印ロ間の防衛協力推進がうたわれ、ロシアのカラシニコフ社製自動小銃AK-203をインド国内の工場で60万挺生産する契約がまとまったと報じられた。ロシアとしては、日米豪印のうちもっとも友好的なインドと関係強化を図ることで、「クアッド」にくさびを打ちたいという狙いもあったのだろう。

では、インドは今後もロシア寄りの姿勢を続けるのか。前述したとおり、軍事面の依存を考えれば全面的に対ロ非難に転換することは考えにくい。だが、ロシア軍侵攻によってウクライナの状況がさらに悪化し、国際的非難が一層高まることになれば、対応の再考を迫られることになるかもしれない。

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