松尾さんは今でも、期待された役割を果たすためにがむしゃらに働き、自分を追い込んでしまうこともあるという。
「以前だったら、『それでもこの環境で生きるしかない』と考えて頑張り続けたと思います。だけど今では、『デンマークにいたときみたいに、無意味な時間を過ごしてもいいんだよな』と、少し立ち止まることができるようになったんです」
と、松尾さんは晴れやかな顔で教えてくれた。その表情からは、他人の期待に応え続けてきた時期を乗り越え、自分のやりたいことを基準に人生を歩んでいる自信が滲んでいるように思えた。
日本でも増えている、キャリアブレイクを過ごす場所
成長や成果を求めることは、かならずしも否定されるべきものではない。けれど、それらのみで存在が評価される環境にしか自分の居場所がない状態は、なかなかにつらいものだ。
そんな状態にある人にとって、「無意味な時間」を過ごすことができる場所や時間は、「今いる環境だけがすべてではない」と気づき、生きづらさを軽くするきっかけになりえる。
幸い、日本でもフォルケホイスコーレを参考にした、キャリアブレイクを支える取り組みが広がっている。松尾さんが関わっている北海道東川町での「School for Life Compath」や、北海道上川町の「そのまんまフォルケホイスコーレ」、岩手県陸前高田市での「Change Makers' College」、長野県の野尻湖エリアで活動する「NoMaFo」、島根県津和野町での「つわのホイスコーレ」、奈良県の「天川村ホイスコーレ」などだ。
成果主義、効率主義の環境から一歩外に出て、無意味だけれど豊かな時間を過ごせる場が増えていることに、筆者のように希望を感じる方もいるだろうし、「怠惰な人間を生み出すだけだ」と感じる方もいるかもしれない。さて、みなさんはどう思うだろうか。
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