世の中の「当たり前」を一度外して考えてみる
宮田純也(以下、宮田):学びは前に進むことだけではないかもしれない。大事な視点ですね。
齋藤亮次(以下、齋藤):大いに共感します。私はもともと塾講師をしていたのですが、塾はある一点と一点をいかに最短距離で結ぶか、それがKPI(重要業績評価指標)としても求められています。ならば学校は何をするところか。
フランスの哲学者のジャン・ギットンは「学校とは一点から一点への最長距離を教えるところである」と言っています。最長距離というのは実に深い言葉ですが、一人ひとり価値観が違う、学ぶプロセスも違う。それぞれがいろいろな弧を描き、まずはそれを肯定していくことが大切だと思います。
安居長敏(以下、安居):今までだったら、人生にはある程度のレールが敷かれていて、予測ができました。だから先生は、文字どおり「先を生きる人」として教えることもできたわけです。でも先を生きる、その先というものがわからなくなっている時代、必要なのは今までのような先生像ではありません。
第一、「その先」というのも前ではなく後ろかもしれませんし。そうした世の中の思い込みとか当たり前と思われている枠組みをどんどん外して考えてみる。すると、100年という時間も、物理的には皆が共通して持っている時間だけれど、どう考えるか、どう過ごすかで長くも短くもなり、浅くも深くもなると思います。