「テストも成績もなく、誰かから評価されることがないので、『自分がやりたいかどうか』以外に判断基準がないんです。だから、自分の興味に素直にしたがって行動することができました。それに、同じ授業を受けても人によって感じることがまったく違う。その考えに触れられるので、40人クラスメイトがいたら40人分の仮説検証をできているような感覚もありましたね」
2カ月の滞在を経て、松尾さんの中で自分のやりたいことがだんだんと明確な言葉になっていった。
それは、まさにフォルケホイスコーレのような「自分を探究できる学びの場をつくること」。26歳のころ、「今この瞬間、何を食べたいのかもわからない」状態だった頃から、2年半。「幸せの仮説検証」は、フォルケホイスコーレという舞台を得て、松尾さんに大きな実りをもたらした。
「無意味な時間をすごしてもいい」と思えるように
デンマークから帰国後、松尾さんは北海道東川町にある日本版フォルケホイスコーレ「School for Life Compath」で学校づくりに取り組んでいる。2023年の秋からは、スコットランドにあるエジンバラ大学の大学院にも留学予定だ。フォルケホイスコーレのような学びの場がどうしたら日本にも根付くのか、研究していくつもりだという。
あらためて今振り返ると、松尾さんにとってフォルケホイスコーレでの経験はどのような意味を持っていたのだろうか。
「『無意味な時間をすごしてもいいんだ』と、思えるようになったことが大きいです。私はずっとどこかで、『生産的な時間を過ごさなきゃだめだ』と思っていた。だからフォルケホイスコーレに入学した当初は、生徒たちとトランプをする時間が耐えられなくて。『この時間に何の意味があるんだろう?』と思ってしまっていました。
でも、しばらくしたら『楽しいからいいや!』と開き直れて、没頭できるようになりました。そしたら、生きやすくなったんですよね。人生のすべての時間に意味を持たせるのはしんどいし、意味がある時間だけが人生じゃないよねって、今では思います」
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