日本からケアンズ国際空港に飛び、プロペラ機に乗り換えて約1時間半。ホーン島空港で小型飛行機に乗り換え、45分ほどでマシッグ島に到着する。長さ2.7キロ強、最も広いところで幅800メートル、サンゴの細かいかけらが砂となって堆積してできた小さな島だ。
宿泊するコテージに着くと、歓迎のしるしとして女性ジャーナリストには花が贈られた。髪にかざるためで、昔からの風習だという。血族である彼らにとって、外部からの女性は大歓迎だったわけだ。
道の端に並べた石灰石が照明代わり
冒頭に記したように、今回は「先住民の島に海外メディアとして初上陸」である。1980年前後に「水曜スペシャル」(テレビ朝日系)で放送された「川口浩探検隊」シリーズに夢中だった世代は、特に、ハラハラドキドキする体験の連続だと思われるかもしれない。
だが、吹き矢が飛んでくることもなければ、洞窟で白骨が見つかることもない。島の人たちは我々と同じような文明的な生活を送っている。
それもここ30年くらい前からのことだという。ガイドの1人、フレイザー・ナイ氏によると、島に電気が通ったのは1990年頃で、「それまでは道の両側に石灰石を並べていたんだよ」。
「石灰石?」
「そう、真っ白な石灰石は月明かりとか星明かりで反射するから。いわば照明代わりさ」
繰り返すが、わずか30数年前のことである。「それまではオーストラリア政府は我々の生活には見向きもしなかった」と、現在49歳だという彼はつぶやいた。
島内散策ツアーは、土地に自生する「ブッシュタッカー(ブッシュフード)」と「ブッシュメディシン」、つまりは野生の食べものと薬草の説明から始まる。「これはレモングラス。味付けに使う」。「エイに刺されたりしたときには、この実をつぶしてその汁を鎮静剤として飲む」……などなど。
島に生える植物への豊かな知識。それは30数年前までの電気すらなかった生活の「おかげ」では決してない。彼ら自身がそうした知識を大切に受け継いできたからだ。
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