豪州、先住民300人が住む「トレス海峡諸島」の世界 電気が通ったのは30年前、石灰石が照明代わり

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島々に住むトレス海峡諸島民は約5000人。一方、本土に住む人たちはその数倍にのぼる。

「できれば、この島か周辺の島に高級リゾートホテルを作りたいと思うんだ。ただ……」

そこで彼は一度口をつぐんだ。「よそ者が島に入ってくるのを好まない人たちがいるのも事実だ。変革には時間がかかる」。

伝統的な料理作りのワクワク体験

街を後にし、野趣あふれる掘っ建て小屋があるビーチに移動。今度は彼らの伝統的な調理を見せてもらう。

根菜類と豚肉の塊をそれぞれヤシの葉に包み、地面に作った炉の中に入れ、上からヤシの葉や土でカバーしたあと、2時間ほどかけてじっくりと蒸し焼きにする。これはあとで我々の夕食になる。

蒸し焼き用の土中の窯。ちょっと「川口浩探検隊」っぽくなってきた(写真:筆者撮影)

ちょうどおやつの時間になり、島で獲れた(というか、そこらに生えている)ココナッツの果汁と果実が提供された。果汁は甘さのないスポーツドリンクかライチのジュース、果実も甘くないナシのような味がした。

「蒸し焼き」の仕込みを終えた彼らは、このあともう1つの夕飯のメインディッシュであるロブスターとタイガープロウン(クルマエビ)のバーベキューの準備を始めるという。女性陣とともに宿泊するコテージに帰ろうとすると、フレイザー・ナイ氏から声をかけられた。

「ブラザー。どこに行くんだ?」

すでにかなり親しくなっていた彼から、私は「ブラザー」と呼ばれるようになっていた。日本の「おい、兄弟」と同じような親しみを込めた表現だ。「バーベキューは男の仕事だろ?」。どうやら私とスイス人のジャーナリストは調理当番のようだ。

バーベキューはオーストラリアの国民食というか、国民的調理法と言いたくなるくらい人気だが、小型ガスボンベで鉄板などを熱するコンロがほとんど。だが、ここでは昔ながらの枯れ枝をくべるスタイルだ。とはいえ、雨も多く湿度が高いので、枝も枯れ切ってはおらず、火に入れると私たちも燻製になってしまうかと心配したくなるくらい煙が出る。

ビーチ沿いの掘っ建て小屋でバーベキューの準備(写真:筆者撮影)
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