日本が「フランス料理世界大会」勝てない根本理由 参加したシェフらが語る「日本に足りないもの」

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準備時間を増やすことで、大会開催直前の秋に発表されるメイン素材が何に決まろうとも、付け合わせを含めたプラッターの構想を練ることができるようになる。そして、いよいよテーマ素材が決まってからは、コーチや三つ星シェフなどとともにレシピを作り上げていく。

いわば、F1のように、「最高級のエンジン=レシピ」を総力戦で仕上げ、出場シェフが徹底的に作りこみ、完璧なまでに精度を上げる。そのためには、これまでの連載で指摘してきたように、資金や人的リソースの拡充が必要になるだろう。

日本ではシェフが自らクラウドファンディングなどを通じて資金を調達したり、自分たちで訓練設備を作ったりとシェフたちの力だけでこれまでやってきているが、勝つ国を見ていると、業界、あるいは国を挙げた総力戦で挑んできている。

日本チームの応援団(ⒸWhite Mirror)

日本の料理産業の未来を見据える必要性

日本がフランス料理界のためにそこまでやる必要があるのか、というところまで議論にも及ぶかもしれないが、これは、フランス料理界の在り方のみならず、日本における料理やレストラン産業の位置づけや、食品業界との関係、シェフのキャリアなどを幅広く見直すいい機会になるだろう。

日本がせっかく世界に美食大国として知られているのであれば、こうした大会が、レストランや食品、あるいは調理機器メーカーなどが一体となって産業を発展、成長させる道筋を考えるきっかけになることが望ましい。

最後に石井シェフにもう一度、ボキューズ・ドールに出場したいかと聞いてみた。「6~8年、みっちり修業を積んで、ミシュランの星をとるなり、ベスト50で上位に入るなり、世界的に見ても、実力と名前が知られるシェフになって、ぜひ、トライしたいです。それまでは、本当の実力をつけるために、精進するのみです」と、潔く語ってくれた。今後も、石井シェフの進化と日本の躍進を見守りたい。

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小松 宏子 フードジャーナリスト

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こまつ ひろこ / Hiroko Komatu

祖母が料理研究家の家庭に生まれ、幼い頃から料理に親しむ。雑誌や料理書を通して、日本の食文化を伝え残すことがライフワーク。近刊に『トップシェフが内緒で通う店150』(KADOKAWA)。

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