世界では勝てない「美食大国日本」に足りないもの フランス料理の世界大会で優勝に必要なのは?

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2021年のフランス料理世界大会「ボキューズ・ドール」ではフランスが優勝した(写真:ボキューズ・ドール提供)
日本がこれまで優勝したことがない、世界最高峰のフランス料理の世界大会「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」。2年に1回、1月に開催される同コンクールには世界各国から一流シェフが集まる、まさに「美食のワールドカップ」だ。
次回は2023年1月に開催される予定で、日本はこの大会での優勝に向けてトレーニングに励んでいるが、実は資金や人手、調理道具の調達など解決が必要な課題は少なくない。本連載ではそんな日本の挑戦を本戦まで追う。今回は「美食の国」であり、技術の高いシェフを多く抱えながらも日本が勝てない理由を改めて考察する。

大皿料理は「子どもが喜んで食べられるもの」に

ボキューズ・ドールの本選(1月22日)まで、約1カ月。出場者にとっては一番苦しい時期だという。

11月の末には、プラッター(皿盛り料理)のテーマが決まった。これがまた意表をつくもので、世界中の子どもたちが喜んで食べられる、かぼちゃと卵を使ったコース料理(冷前菜、温前菜、デザート)である。子どもを対象にした出題は、長いボキューズ・ドールの歴史の中でも初めてだ。

今回のテーマの背景には、ファストフードやデリなどの普及により、家庭の味を知らずに育つ子どもが多い現代において、食育の意味合いを含んでいるのかもしれない。または、世界には食事を充分に摂れない子どもたちも多くいるということを憂慮し、世界中の子どもたちが幸せになれるようにという願いが込められているのかもしれない。

このプラッターに限り、出場国24カ国の試食審査員に1人ずつ子どもがつき、子どもの点数もカウントされるという。しかも、子どもの持ち点のほうが多いという、噂もあるほどだ。チームジャパンも困惑気味である。子どもの好きな味を考えなければいけないし、その中にどうやって、テクニックや革新性をしのばせるのか。

これから本選までにどんなことがあるのかを書きだしてみよう。12月23日はすべてのレシピと、作文の提出締め切り。作文のテーマは今回、プラッター(大皿料理)の付け合わせに自国の豆を使うことになっているが、なぜその豆を選んだかという文化的背景について。

日本チームが選んだのは小豆。歴史的におめでたいときの赤飯には欠かせず、和菓子の主素材という、文化的に重要な位置をしめてきたからだ。その作文は、本選の前日の全体会議の日に、日本の試食審査員である「HAJIME」の米田肇氏が読み上げる。それも、全体得点の中で10点を占めるのであなどれない。

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