浜田氏は、今まで勝てなかった要因は時代背景も含めいろいろとあるが、ここのところ勢いを付けている北欧勢(2021年大会は2、3位、2019年大会は1~3位を総ナメ)は圧倒的なクオリティーの高さと、魅せる料理を持っている、と分析する。
一方、開催国のフランスはそれまで味重視で、北欧よりは劣るプレゼンテーションだったが、前回大会ではコンセプトもプレゼンテーションも明確にし、群を抜いてきて優勝した。このようにセンスのいい独自性がないと難しい大会なのだ。「日本に足りないものの一番はそこにあると思う」(浜田氏)。
長谷川氏は、これまで勝てなかった原因は、北欧やフランスを超えるような、本当に美味しい料理を作れなかったことが要因だとみる。レストランで提供するような、暖かみがあり、奥行きのある美味しい料理を提供するという基本的なことが空回りしていたように感じるとも。
日本の「オリジナリティー」をどう追求するか
しかしながら、世界一の料理とは、途方もない未知の世界であるので、自分たちが自信のある料理を提供する事が結局、一番の近道。正解がなんなのか理解していないが、北欧ではなく、フランスではなく、日本独自のフランス料理を目指すことによって道が切り開けると感じる、と。
三者三様の分析であるが、共通しているのが、美味しさと一歩先をいくオリジナリティーだと思う。北欧全盛の現在の中では、驚くほどのテクニックを駆使した美しいプレゼンテーションが重視されるのは、2023年も同様であろう。ただ、ここで、北欧や去年のフランスのモノマネではなく、日本人にしかできない、日本のオリジナリティーをどのように出していくのか、そこに勝敗はかかっていると分析する。
コンテスタントの石井氏は、パティシエの経験もあるため、ムースなどにした食材を形作ることに長けている。3Dプリンターを使用した型を使い、これまでにない造詣を作り上げることに注力しているそうだ。また、盛りつけるプラッターは、国内外で活躍するプロダクトデザイナー、鈴木啓太氏がデザインした、浮世絵にインスパイアされたものだ。
といって、もちろん「べたな日本」ではまったくない。ボキューズ・ドールで必要とされる、フランス的装飾性を満たしつつ、日本人にしかできないデザインを表現している。この日本的美意識と料理の完成度が見事にマッチしたときに初めて、世界が目を見張るものになるのだと思う。繊細な味覚を備えた日本人であるからこそ、味に関しては、コーチ陣とともにしっかりと固めたレシピどおりに、当日、持てる力のすべてを出し切るだけだ。
泣いても笑っても1カ月。はたしてどのような料理ができあがるのか。その結果は速報でお伝えしたい。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら