歌舞伎界「世間離れした慣習」でエンタメ界に激震 「猿之助騒動」でスター誕生も映画は公開延期に

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市川猿之助 歌舞伎
歌舞伎俳優ののぼりが立つ明治座(筆者撮影)

創業150周年と銘打った記念公演で賑わう日本橋浜町の明治座に突然の災難が降りかかった。4月、5月の記念公演は歌舞伎で、5月は「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」。役者名をタイトルに冠した公演で、さながら、歌舞伎版「ワンマンショー」といった感じだ。その市川猿之助が突然の休演となり、明治座は大混乱に陥った。

昼の部、夜の部の2部構成で、双方とも猿之助が主役を務める。昼の部は1979年に3代目猿之助(現・市川猿翁)初演で宝塚のスタイルを取り入れた歌舞伎レビュー「不死鳥よ 波濤を越えて―平家物語異聞―」、夜の部はやはり3代目猿之助が1984年に明治座で初演し、6役早替わり、宙乗りで知られる「御贔屓繫馬」(ごひいきつなぎうま)。歌舞伎界で集客力ナンバーワンとも言われる猿之助(澤瀉屋・おもだかや)ならではの公演だ。

事件が起きたのは5月18日。猿之助自身が体調不良で休みたいと劇場側に連絡したのが、18日朝。同日の昼の部は休演になったものの、夜の部は中村隼人(29歳、萬屋)の代役で公演を続けた。昼の部は翌19日も休演となるものの、20日からは市川團子(19歳、澤瀉屋)が代役を務めて公演を続行した。

堂々と代役を務めきった

結局28日の千秋楽まで、昼の部は團子、夜の部は隼人が猿之助の代役を務めきった。緊急事態にも動じず、主役不在の舞台で堂々と主役を務めた2人の演技が注目されることとなり、連日大入り状態となった。

実は、夜の部の「御贔屓繫馬」は千秋楽の28日には猿之助の役を隼人が演じることが予め決まっていた。猿之助の、若手に主役の機会を与えて実力をつけさせたいという思いからだ。したがって、急遽の猿之助休演でも隼人は演じる準備ができていたと思われる。

しかし、昼の部の「不死鳥よ 波濤を越えて」はそうした予定はなく、しかも團子は夜の部には出演していたが、昼の部は出演していなかった。にもかかわらず、緊急事態が起きた18日の翌々日の20日には47歳のベテラン猿之助の代役を若干19歳でみごとに務めたのだ。その雄姿が話題となり、チケットの人気が沸騰し、昼の部は完売となった。

隼人が代役を勤める夜の部も宙乗りに6役早替わりという澤瀉屋が得意とする観客サービスたっぷりの演目で、こちらもほぼ完売の状況となった。「顔よし、声よし、姿よし」と注目の隼人の宙乗りに観客は魅了された。

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