歌舞伎界「世間離れした慣習」でエンタメ界に激震 「猿之助騒動」でスター誕生も映画は公開延期に

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役者が休演しても代役がすぐに立てられ、興行は休演にならないということが歌舞伎ではよくある。歌舞伎界の役者全体が歌舞伎の継承という理想の下では家族のように芸の継承に協力し、御曹司たちは子どもの頃から歌舞伎座などの劇場で多くの時間を過ごし、所作やセリフ、長唄、義太夫などの音楽にどっぷり浸かった「英才教育」を受けているので、やり遂げてしまうのだ。

御曹司が家を継承するということは、出生で役者の道が決まり、逆に歌舞伎の名家に生まれてこなかった役者を排除するシステムのように映る。一方で御曹司にはそれが役者として小さいころから経験を積む機会を与え、幼心にもその責任と運命を自覚させる効果を持っている。

昨年11月、12月の2カ月間、歌舞伎座で市川團十郎白猿の襲名披露興行があったが、息子の市川新之助襲名も同時に行われた。わずか9歳の男の子が「外郎売(ういろううり)」、「毛抜」の舞台で主役を務めて話題となった。

また今年5月の歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」では、尾上菊五郎の孫で、フランス人の父と菊五郎の娘・寺島しのぶを母に持つ10歳の寺嶋眞秀の尾上眞秀襲名初舞台の演目「音菊眞秀若武者」で、眞秀は男役、娘役の2役を演じ切り、こちらも拍手喝采の舞台となった。

現代的なシステムの導入も

歌舞伎は世界的に見てかなり異質の舞台芸術だ。歌舞伎の演目のひとつに「口上」がある。襲名披露興行等の記念興行で見られる演目で、要は役者たちの「ご挨拶」それだけである。役を演じるのではなく、役者が襲名等にあたっての抱負を語り、歌舞伎界の幹部たちがそれに応援等の挨拶をするだけのものだが、その様式美と出演者の豪華さが魅力であり、「役者の成長を楽しむ」という歌舞伎ならではの演目で、人気が高い。

家の芸を中心とする演劇が歌舞伎であり、したがって、世襲を基本としているが、江戸時代の役者の身分制をそのまま引きずっている訳ではない。そこには工夫や現代的なシステムの導入も見られる。

嫡男ができない名跡役者はいるし、また、いたとしても役者に向かなかったり、嫌がる場合もある。そのままではお家芸が途絶えてしまうので、養子や部屋子という形で、継承することがある。部屋子とは、部屋に預けられた子どもの役者だ。

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