外部の人との交流が大事、違う分野に触れることが仕事の質を上げるといったことがよくいわれるが、実際のところ、日々の業務に追われて余裕がない、あえて出かけていくモチベーションがないといった声を耳にする。
「メンバーの顔を見ていると、好奇心が刺激されていく過程がよくわかります」と鈴木さん。プログラム化することで半強制的に体験できるし、行ってみれば楽しさやおもしろさがわかる。そして、現場が大事という感覚を実感し、次の発想や行動につながっていくと腑に落ちた。
鈴木さんは、エステーの事業を再定義することも進めてきた。
今までは、消臭やアロマといった領域の日用品メーカーとしてやってきた。だが、空気を軸にすると、オフィス、病院や介護施設、駅、商業施設など、さまざまな可能性が広がってくる。それぞれの場において、空気をかえるビジネスに、どんどんトライしていく。
つまり、エステーを「トータルエアビズ、つまり空気ビジネスの総合企業グループ」と位置づけたのだ。
BtoCに加えてBtoBビジネスにも注力
従来は、基本的にBtoCのビジネスを主体としてきたが、BtoBビジネスにも力を入れ始めている。「うちがやってきたBtoBビジネスは、業務用の手袋を代理店に販売するなど限られた領域だったのですが、最近、ホテル用のルートなども開拓しています」(鈴木さん)。
代表例の1つが、2019年に発売された、客室用の専用消臭ミスト「Air Forest」だ。トドマツの樹木水を成分とするもので、消臭や除菌効果がある。森の自然な香りを楽しめるということで、好評を得ているという。
製品に含まれるトドマツの成分は、エステーグループの「日本かおり研究所」が「国立研究開発法人 森林研究・整備機構」とともに開発したもの。北海道のトドマツの間伐材から抽出した成分「クリアフォレスト」を基にしている。通常、この手の抽出は高温の水蒸気蒸留によるものだったところを、減圧してマイクロウェーブをかける特殊な製法によって、良質な樹木精油、樹木精水、針葉粉を抽出することに成功した。
「森林の恵みと人の暮らしをつないで循環させていくというSDGs的な考えが盛り込まれたものでもあります」と鈴木さん。そういった背景も含め、「Air Forest」は評価を得て成長していっている。一般の人から「欲しい」という要望があることから、「Air Forest Refresh Mist」という商品を作り、昨年秋からEC販売もスタートした。
このように新しい発想をもとにした事業の領域が広がっている様子を聞き、順風満帆に動いているように感じたので、何か課題はないのかと聞いたところ、「もう悩みだらけですよ」と答えが返ってきた。
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