「日用品メーカーの社長として求められるのは“清潔感”であり、白を身に着けると背筋がすっと伸びる。その感覚を大事にしたいと思ったのです」(鈴木さん)
パーティーなど大勢が集う場に行っても、白を着ていると一目でわかるので、自分の存在を伝えられるし、探してもらいやすいのも役立っているという。社長としての自分を表現する手段として、ファッションをとらえているのだ。今回の取材でも、ヘアメイクの女性がついて、撮影時に細かいケアをしていた。
エステーの“らしさ”について聞いたところ、「まさにコーポレートスローガンである『空気をかえよう』がすべてを物語っているのです」と返ってきた。2004年に作られたこのコーポレートスローガンは、月1回の朝礼をはじめ、大勢が集まる会議の席で、行動規範とともに全員で唱和する習わしになっているという。
「私たちのビジネスは『空気をかえる』領域にまつわるものですが、“らしさ”はそこだけを意味しているのではないのです」(鈴木さん)。
「かえる」という言葉には、新しい挑戦という意味も含まれており、よどんだ空気を時代に合った空気にかえていくことを目指している。「自分が使う時間を効率的に吟味し、時間を作って挑戦していく。しかもそれは、お客様に喜んでもらい、お客様とともに価値を生み出すような挑戦をしてほしい」(鈴木さん)
しかも挑戦する姿勢を応援し、失敗してもリベンジのチャンスがあるという企業の姿勢が“らしさ”を形づくっているという。
社長就任時、周りはスーツの男性ばかり
言うは易しだが、実践していくのは難しいのではないかと尋ねたところ、「私自身もすごく悩んできたところです。2013年に社長に就いたとき、周りは黒いスーツを着た男性ばかり(笑)」だったと言う。
商品もパッケージのデザインが男性的で、「店頭で目立つこと」を考えて作られていたものも少なくなかったそうだ。「例えば、芳香剤も真っ赤なゼリー状のものがあったりして、使い手の視点に立っていないんです。なのに、それをおかしいと思っていなかった」。
鈴木さんは、「お客様の気持ちに寄り添った商品を作るべき」と訴えたものの、抵抗にあったという。
「意思決定層が男性ばかりだったこともあり、従来の延長線上で判断するのが当たり前になっていたのです」(鈴木さん)
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