刷新進むエステー、創業者の娘が変えた空気の正体 10年前、社長になった鈴木貴子氏が覚えた違和感

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それでまず、外部デザイナーに依頼し、一緒にもの作りするプロジェクトを起こした。社内では出てこなかった視点や発想に触れることで、自分たちが知らず知らずのうちに枠組みを作っていたと気づかされた。

次のステップは、外部の力を借りずに自分たちが中心となって、新しいデザインをやってみるプロジェクトだった。それが2015年に発売された「消臭力 Premium Aroma」だ。

「『消臭力』のプレミアム化をはかろう」というお題のもと、いくつかのグループによるコンペみたいな形をとったプロジェクトだった。それぞれがリサーチや議論を重ね、最終的には、香りそのものを「ぜいたくなアロマをブレンドしたエレガントで上質なもの」に変えるとともに、パッケージも一新した商品を作り上げた。

既存のものに比べ、価格が3割ほど高くなったがヒット商品になった。新しいことに挑戦して成功したという事例が出てきたことで、社内で自主的に挑戦しようという機運が生まれてきたという。

エステーのひよこのロゴマーク
エステーのシンボルとなっているひよこのロゴマーク(撮影:梅谷秀司)

この成功は「高付加価値で高単価なもの作り」というベクトルを示すことにもつながった。本来的な意味の価値づけができていれば、相応の対価を払う消費者がいることが明らかになったのだ。

以来、他の製品についても「お客様にとっての価値を上げる工夫が何かできないか」と、製品の価値を進化させることについて、知恵を絞るようになったという。

社員を外部の人や違う分野に触れさせて好奇心を刺激

また「トレンド・ラボ」という試みも行っている。これは、経営層や若手社員によるメンバーが一緒に街に出て、世の中で話題になっている場所や商品を体験するプログラムだ。

もともとは2017年に鈴木さんが旗を振って始めたもので、当初は事業部・開発・経営企画などの若手の女性社員やベテランの男性社員などが一緒に進めていたが、コロナ禍もあって中断していた。「外から新しい風を入れようと考え、異なる業種で新規事業を立ち上げて成功した人に入ってもらい、2022年に新規事業開発室を作ったのです」。そこが「トレンド・ラボ」を担うことにしたという。

毎月1回程度、あるテーマのもとでプログラムを組み、メンバー全員で体験することにしている。最近では、「ブティック的な感覚のホテルの潮流」といったテーマで、渋谷の「トランクホテル」や「キンプトン新宿東京」を訪れた。青山近辺で多数出てきているアロマブランドのブティックを見て回る会も実施した。単に訪れるだけでなく、内部の人の話を聞いて、案内してもらう内容になっている。

次ページ事業の「再定義」にも着手
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