瀧本:具体的にオムロンの課題を考えるとコンシュマー寄りのところが弱いですね。僕はオムロンの体重計、睡眠計などいろいろ持っていますが、テックユーザーは使うのだと思いますが、その他のユーザーに広げるために必要な、家電的なところが弱いように思います。そうしたところに新事業のタネがありそうです。
小澤:実際にヘルスケアについては、米国のシカゴに、ウェアラブルのMira(ミラ)というベンチャーを作りました。試みとして、それはどちらかというと、ユーザーエクスペリエンスにフォーカスして製品開発を進めています。社内チームではやり切れなかったことを、ベンチャーという形で挑戦しています。
おっしゃるように、オムロンは、ヘルスケアの事業に対し、医療機器としての入り方をしてしまう。今、ちょうど反対側から、コンシューマプロダクトとしてのヘルスケア機器が出てきているので、新たなやり方が必要になっていると思います。
ベンチャーと企業のよい部分を生かしたい
小澤:そうすることで、オムロンだけでなく、ベンチャーにもメリットがあります。多くのITサービス系の場合、ベンチャー企業が自分のアイデアをそのまま製品化して普及させることができるので、大企業と組むことが絶対ではない。しかし、ものづくりが絡む場合は、プロトタイプまでは作れても、量産できて、なおかつ、それをちゃんと世の中のお客さんに届けるところまでいくとかなり難しい。そういう意味で、バリューチェーンの上流のところはベンチャーが担い、下流のところ、安いものをたくさん作る部分は大企業がやればいい。ここはお互いにいい関係でいけるんじゃないかなと。
瀧本:ファブレス・ベンチャーと大企業の工場、あるいは製薬ベンチャーとメガ・ファーマというような関係ですか。
小澤:そういう関係性が成功の鍵かもしれません。実際に今、われわれの具体的な投資が始まっていますが、投資先に対しては、オムロンのものづくりの専門部隊である、グローバルものづくり革新本部の、いわゆる匠的な方からアドバイスをもらいながら進めています。量産できるところまで設計レベルを引き上げるのです。
瀧本:なるほど。実は今、京大でも大学の持っているシーズを使っていこうとしています。私は、京大のプログラムのうちのひとつの責任者をしています。その際に難しいのが量産可能性の判断です。大学では再現性が低い実験でも10回に1回ぐらい、いい数字が出れば研究になるわけですが、実際に製品化する場合には再現性を高めて、実験室ではない空間で作ることが必要になります。そのため企業と組むことは、非常に重要です。
小澤:確かに、量産できるレベルにして、それをスケールするところまでやることを考えると、ベンチャーだけでやっていくのはしんどい。ほぼ無理だと思います。
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