「移動可能なプロフェッショナル」を目指せ 小澤尚志×瀧本哲史「博士起業の可能性」

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シーズにいる人間が、いきなりニーズ側のことを考えるのは、簡単ではない

瀧本:グーグルの創業者も、1人はすごい技術者ですが、もう1人はテーマが見つからなくて、起業相談をしてグーグルを作ったみたいなところもありますね。

小澤:グーグルのようなすごい会社はなかなか生まれないでしょうが、アカデミアからベンチャーというルートは、もっとあっていいですね。

マーケティングの方を学べる場が増えればいい

ただ、シーズにいる人間が、いきなりニーズ側のことを考えるのは、簡単ではない。私は、ほぼ独学でマーケティングなどの勉強をしましたが。もうちょっと、型は教えてあげたほうが、「だったらできる」という人も増えていくかもしれません。長い目で見ると、そこを知っておくことが本人のキャリアにとってもリスクヘッジされた状態になると思います。

瀧本:そうですね。大企業でも、アカデミアでも、ベンチャーでも、壁を取り払えて、どこでも移動できるような人が実はいちばん安全です。逆に、そういう移動可能なプロフェッショナルは、企業のほうも離さない。だから、二重の意味で安全になります。

実は京大も、GTEP(Global Technology Entrepreneurship Program)という大学院生が起業の基礎から実戦までを学べるプログラムを昨年度から始めました。

小澤:組織に依存してしまうと、言いたいことも言えないし、やりたいこともやれなくなる。そのことが、企業にも悪影響を及ぼしていく。その意味でも、今の若い人たちには、移動可能なプロフェッショナルということを念頭に置いてほしいですね。 

(撮影:大澤 誠)

瀧本 哲史 エンジェル投資家

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たきもと てつふみ

京都大学客員准教授、エンジェル投資家。東京大学法学部を卒業後、東京大学大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼーに入社。3年で独立し、日本交通の経営再建などを手がける。その後、エンジェル投資家として活動しながら、京都大学では「交渉論」「意思決定論」「起業論」の授業を担当し人気講義に。「ディベート甲子園」を主催する全国教室ディベート連盟事務局。著著に『僕は君たちに武器を配りたい』『武器としての決断思考』『武器としての交渉思考』がある。

【2019年8月16日18時00分編集部追記】2019年8月10日、瀧本哲史さんは逝去されました。ご逝去の報に接し、心から哀悼の意を捧げます。

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