朝ドラ「らんまん」安定感だけでは物足りないワケ 前2作に欠如していた「現実感」「躍動感」を

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あと、第1~2週に込められていた「格差(の打破)」というテーマも、ストーリー全体に広がってほしい。武士・商人、本家・分家、身体の強い・弱いなどの「格差」、そしてもっとも鮮烈だったのは男性・女性の「性差」。そう、主人公の姉・綾が酒蔵に入れなかったシーン。

――「おなごはいかんがじゃき。酒蔵の神さんがおなごを嫌うき。酒が腐りよる」

と言われた綾(佐久間由衣)が今後「性差」を超えて、峰屋の酒造りにいかに関わっていくか。「格差の打破」とは堅苦しいが、極めて現代的であることに加え、「女性の社会進出」は、そもそも朝ドラの本質的テーマなのだから。

最後に「躍動感」の視点で言いたいのは「ザ・神木隆之介ショー」が見たいということ。とにかく自由に奔放に暴れてほしい。『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 らんまん Part1』(NHK出版)で、神木隆之介はこう述べている。実に頼もしい。

――万太郎は菓子屋の寿恵子さんと運命的な出会いをします。彼の一目ぼれで(笑)。彼女の笑顔に心を打ち抜かれて、体ごとすっ飛んで近くにいる竹雄にぶつかるとか、台本にないこともアドリブでやってます。(中略)僕をよく知る志尊淳君は、「またやってるな。じゃあこうするよ」と受けてくれるのも楽しい。(中略)歴史ある朝ドラで冒険させてもらっています。

牧野富太郎の名言

「世の中に雑草という草はない」

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先に紹介した書籍のサブタイトルになっている、牧野富太郎の名言である。第一義には植物分類学の本質を述べているのだが、引いて見ると、忖度と格差の中でうんうん唸りながら、それでも雑草のようにしぶとく生きている一人ひとりに向けたメッセージのようにも見えてくる。

朝ドラは、言わば数千万人の我々雑草に向けたエンターテインメントだ。「安定感」に加えた「現実感」「躍動感」で、毎日の養分となって、我々の生活に花を「らんまん」と咲き誇らせてほしい。

スージー鈴木 評論家

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すーじー すずき / Suzie Suzuki

音楽評論家・野球評論家。歌謡曲からテレビドラマ、映画や野球など数多くのコンテンツをカバーする。著書に『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト・プレス)、『1979年の歌謡曲』『【F】を3本の弦で弾くギター超カンタン奏法』(ともに彩流社)。連載は『週刊ベースボール』「水道橋博士のメルマ旬報」「Re:minder」、東京スポーツなど。

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