ダルビッシュの言葉の魔球が球界を変革する理由 キレもクセもある最上級の言葉が持つすごみ

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ダルビッシュ有の言葉の力(写真:共同)

いよいよWBCが始まる。いち野球ファンとして、予想以上に盛り上がっているのに驚いている。やはりメジャー組、特にダルビッシュ有と大谷翔平の参加の影響が大きいのだろう。

そんな私は、WBCの試合結果もさることながら、ダルビッシュが侍ジャパンの若手選手たちとコミュニケーションする結果に期待したいと思っている。まずは『週刊ベースボール』(3月6日号)より。

キャンプ2日目の18日には今永昇太(DeNA)、伊藤大海(日本ハム)とともにブルペンに入った。すると若手投手陣がいっせいに集結し、熱い視線を送る。(中略)事実、ダルビッシュは多くの若手投手たちと積極的にコミュニケーションをとり、変化球の握りを含めて身ぶり手ぶりを交えながらアドバイスを送っていた。

続いて、『週刊文春』(3月2日号)に掲載されたドラゴンズ・髙橋宏斗のダルビッシュ評。

「意識が違う。何気なく投げている球が一球もない。見ているだけで刺激になった」

若手選手たちが、憧れのダルビッシュと間近に接して、大いに触発されていることがよくわかる2つの記事である。

そんなダルビッシュに私が期待したいのは、技術の伝授以上に、「言葉」の伝授だ。

最上級のプレーヤー(日本野球史上最高の投手と考える)でありながら、最上級の言葉を持った最上級の批評家ともいえるダルビッシュ。そんな彼の持つ最上級の言葉が広がれば、日本の野球界が、頂点から変わっていくと思うのだ。

かねて私は、ダルビッシュが記者会見やブログ、ツイッターなどで放つ言葉に注目してきた。今回はその中から、彼の繰り出す変化球以上にキレッキレな言葉を見ていきたい。

「戦争」のようなスポーツ観にNO

まずは今回のWBCについて。ダルビッシュは早々に、こんな言葉をまっすぐに投げ込んだ。

「(日本代表は)少し気負いすぎというか、戦争に行くわけではない。気負う必要はないと伝えたい」(日刊スポーツ/2月5日)

「絶対に負けられない戦いがそこにはある」――WBCの報道過熱の底辺には、この、よく使い回しされがちな芝居がかったコピーに表れる、まるで「戦争」のようなスポーツ観がある。

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