「自分のことは忘れてほしい」子を手放す親の迷い 余命3カ月の父の視点から考える特別養子縁組

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余命を宣告された父はわが子を……(映画『いつかの君にもわかること』© 2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl.)
頼る先のないシングルマザーやシングルファザーが、もし重篤な病気になってしまったら……。愛するわが子をどうしたらよいのだろう。そんな問いを描いた映画がある。
『いつかの君にもわかること』(現在公開中)は、余命宣告を受けたシングルファザーが、息子のために“新しい家族”を探す物語だ。エンドロールには「実話から着想を得た物語」とある。
映画を手掛けた名匠ウベルト・パゾリーニ監督は、日本では阿部サダヲ主演でリメイクされた『アイ・アム まきもと』のオリジナルで、ベネチア国際映画祭4冠の『おみおくりの作法』などで知られる。本作では父と子で過ごす限られた時間の尊さと、2人の心情の移ろいを丁寧に描いている。
これは映画の中や海外だけの話ではない。日本でも同様のケースで路頭に迷ってしまう親子がいると話すのは、社会福祉法人「日本国際社会事業団(ISSJ)」の石川美絵子氏(常務理事、社会福祉士)と大場亜衣氏(社会福祉士)だ。
同団体では、日本で特別養子縁組のあっせんや養子当事者の相談にあたる。映画から見えてきた、国内の特別養子縁組や当事者のルーツ探しの現状などを聞いた。

(以下、映画のネタバレを含みます)

育ての親が「癒やしの存在」に

映画のストーリーは次の通り。窓拭き清掃員として働く33歳のジョン(ジェームス・ノートン)は余命3カ月の宣告を受け、4歳の息子マイケル(ダニエル・ラモント)の養子縁組先を探す。

手厚い教育を約束する裕福な夫婦、不妊治療を経て里親となった夫婦、実子・養子など多様な子どもを育てる大家族、10代で出産した子どもを養子として他者に託した過去があり、里親になることを希望するシングル女性、子どもを産まずに母親になりたい女性と「真の貢献をしたい」と願う男性のカップル……。

特徴の異なる5つの家庭を訪問したジョンは大いに迷う。最終的にマイケルを誰に託すのか。

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