「自分のことは忘れてほしい」子を手放す親の迷い 余命3カ月の父の視点から考える特別養子縁組
「一般的に言われるのは、民間だと『養子縁組か、そうでないか』の2択になりがちです。児相につなぐと一旦、施設に預けられたまま、児童虐待の対応で多忙なために、そのままになっている子どもが多いという現状があります。そうなると民間の事業者は『やはり特別養子縁組をしたほうがよかった』と考えてしまいます」(大場氏)
生みの親が「育てられない」と思っていても、何らかの支援につなげば育てられるかもしれない。映画の父子ように「育てられないけれど、離れがたい」という場合もある。石川氏は「個々のケースに寄り添い、児相・民間の双方が連携して取り組むことが必要」と話す。
養子縁組が増え、それを支援する機関・団体にそれぞれ特性があることから、大場氏は「どこが自分のニーズに合ったあっせんをしてくれるかを、生みの親が選べる時代になりつつある」としている。
未来の息子に宛てて手紙を書いた
ジョンは当初、「息子が新たな家族と暮らすようになれば自分を忘れてほしい」と願っていた。しかし、“新しい家族”を探す過程を経て、子どもが将来、自分のルーツを知る手がかりとなる品を集め、「思い出ボックス」に収める。未来のマイケルに宛てて手紙も残した。
このように子どもがルーツを知る意味とは何なのか。
「ルーツ探しとは『自分は誰か』『これからどうすべきか』などの質問を通して自分のアイデンティティに向き合うプロセスです。ルーツがわかっても自分探しは終わりではなく、生みの親やその親族と会い、交流するかどうかも含めて一生続くプロセスです。気持ちや生活が不安定なときは避けるべきであり、リスクが伴うこともあります」(石川氏)
ISSJは養子縁組をあっせんする前に、「児童調査」として聞き取りを行い、ファイルを作成、保管している。生みの親の名前や生育歴や、好きな花や食べ物、名前の由来など、人となりがわかる情報を残す。わかれば子どもの父親の情報も盛り込む。分量はA4の紙で4枚から5枚。