養子として育った人はどんな思いで人生を歩んでいるのか――。
日本では、“血縁の両親と子ども”がいわゆる「ふつうの家族」と考えられ、これと異なる環境に育つ子どもは「変わった家の子」「かわいそう」と見られがちです。でも実際、いわゆる「ふつうの家族」ではない環境でも、のびのびと育っている子どももたくさんいれば、形が「ふつう」でも、親との関係に苦しんでいる子どもも少なからずいます。
今回連絡をくれた千秋さん(仮名)は、32歳。昨年結婚をする際に、親から特別養子縁組で家に迎えたことを聞かされました。「青天の霹靂のような衝撃」を受けたものの、これまでを振り返って自身を「かわいそうだったとは思わない」という彼女の話を聞きに、ある地方都市へ。小雨の降る朝、駅前のホテルにある、静かなカフェで落ち合いました。
結婚を機に両親から「実は養子だった」
「特別養子縁組」というのは「養子縁組」の1種です。養子縁組は、血縁とは関係なく法的に親子関係を生じさせる制度で、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。
「普通養子縁組」は生みの親との親子関係が残るのに対し、「特別養子縁組」は生みの親との関係がなくなります。「特別養子縁組」は、子どもの年齢が6歳未満に限って認められてきましたが、今年の6月、年齢を「15歳未満」に引き上げる法律が可決されました(施行はまだ)。
現在、特別養子縁組の成立件数は年間約600件。これは10年前の2倍近い数字ですが、今後も増えていくことが予想されています。
ここ数年、特別養子縁組で子どもを迎えた親たちの情報発信は増えてきましたが、養子となった子ども本人からの声は、なかなか聞こえてきませんでした。そんななかで今回連絡をくれたのが、千秋さんでした。
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