女性活躍推進の大号令のもと、仕事と育児が両立できる制度や環境は、以前に比べ少しずつ整ってきている。産休や育休の取得は権利として認められ、復職した後は肩身の狭い思いをすることが多々ありながらも、子どもに発熱があれば親が休むことはやむをえない。
しかし、それはあくまでも「子どもを産んでから」の話。
日本では5.5組に1組の夫婦が不妊の検査や治療を受けているといわれている。”妊活”という言葉が一般的になっても、経験者でなければわからない苦労が多いのが不妊治療だ。
通院のタイミングや回数は、月経周期や卵子の生育具合などに左右されるため、自分の意思でコントロールすることは難しい。治療前に受ける不妊検査ですら、生理3日目、排卵1週間後、生理終了から排卵までに来院などと細かく指定される。そして治療を開始すると、「タイミング法」「人工授精」「体外受精」と段階が進んでいくのだ。
通院回数がかさむ理由
排卵日に合わせて夫婦生活を行う「タイミング法」でも、排卵日を確認するための通院は必須。排卵日とおぼしき日の近くを指定されてまずは通院するが、そのときに卵子が育っていなければ「2日後にまた来てください」などと言われ、回数がかさんでいく。思うように育たなければ排卵誘発剤の注射や投薬が追加されることもある。
次のステップの「人工授精」になるとさらに行程が増える。卵子を薬などで育て、排卵予定日に精子を持って受診し、子宮へ直接送り込む方法だ。
だが、卵子が思うように育っていなかったら「また明日来てください」などと言われ再受診する。さらに、無事に終えても「排卵を確認するため明日来てください」と言われる。
そして、卵子を取り出して体外で授精し、体外培養後に子宮に戻す「体外受精」や「顕微授精」は、スケジュール上の拘束日数もさらに増える。採卵では麻酔を使用したり、手術後の卵巣の腫れなどで痛みが残ったりと、体への負担が格段に上がる。採卵に向けて投薬や注射回数も重なり、移植後に子宮内膜のコンディションを整えるなど、付随する行程も増える。
仕事をしている女性にとって、仕事と治療の両立は負担以外の何物でもないのだ。本稿では仕事と治療を両立した2人の女性の話を紹介したい。
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