「特別養子縁組」で子を授かった夫婦のリアル 新たな家族が誕生するときに起きること
「生みのお母さんの気持ちを思うと、辛くて逃げ帰りたくなりました」
こう話すのは、約一年前に特別養子縁組をおこない、養子を授かった養親(養子を家族として迎える親)の石井友子さん(仮名)です。
「子どもの生みのお母さんと養親が対面するケースは多くない」と特別養子縁組の支援をおこなう一般社団法人ベビーライフ(東京都)の川上真季さんは言いますが、石井さん夫妻は子どもを迎えに行く際に、生みの母親と対面する機会がありました。
生みの母親は泣いていた
生みの母親は子どもと別れる辛さから言葉にならないほど泣いていて、「(石井さん夫妻と)まともに会話できない状況だった」と友子さんは語ります。
「私も一緒に泣きそうでした。本当は聞きたいことがたくさんあったんです。妊娠中、どんな風に過ごしたのか、どんなお産だったのか。その子への想いや、私たちへの要望などを聞いて、将来子どもに伝えようと思っていましたが、聞けませんでした」
一方で、夫の石井政行さん(仮名)は「その場にいるのは苦しかったですが、それでも私たちと会うという選択をしてくれたのは嬉しかったです」と言います。
「生みのお母さんが断腸の思いで手放すことを決めたのが伝わってきたので、この子を育てるということは自分たちだけの問題ではない、生みのお母さんの分もちゃんと育てなければと強く思いました」と政行さんは語ります。
今回、生みの母親との面会を果たして特別養子縁組によって子どもを迎えた養親の夫妻を取材しました。どのようにして子どもを授かり、実際に養親となっていくのか、そしてそこにはどのような想いや考えがあるのかを見ていきます。