「自分のことは忘れてほしい」子を手放す親の迷い 余命3カ月の父の視点から考える特別養子縁組

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このような背景もあって日本では、施設養育より家庭養育、さらには里子からパーマネンシー(恒久的な家庭)を重んじる特別養子縁組へ……という流れがある。全国で成立した特別養子縁組は2010年に325件だったが、2020年には693件と10年間で倍増している。国は特別養子縁組の成立件数を、数年先には1000件以上と目標を掲げている。

では、子と育ての親のマッチングには、どのような根拠があるのだろうか。ジョンはマイケルの“新しい家族”を決めようとするが、なかなか結論は出ない。「子どものことをよく理解しているつもりなのに、何がベストなのかわからない」と悩む。実際、あっせんする場面において決め手となる要素は何だろうか。

「家庭が安心できる場となるためには、子どもをそのまま受け止めてくれる人であってほしいと思います。ジョンも同じような気持ちで『この子が家族に入ったとき、息子はチームの一員になれるか』を考えながら5つの家庭を訪ねたように見えました」(大場氏)

実際、育ての親と子どものマッチングがうまくいかず、児童養護施設に戻ったケースでは、「パパとママはチームだったけれど、自分はそこに入っていけなかった」と話した子どもがいたそうだ。「子どもときちんと向き合い、受け止めようとしてくれる家庭であることが縁組の決め手となる」と大場氏は話す。

日本の特別養子縁組は児相と民間の2ルート

ISSJは長く、特別養子縁組の「あっせん」と「相談」という役割を担ってきた。日本で特別養子縁組は、児相と全国に23ある民間のあっせん事業者(2022年4月現在)を経由する2つのルートがあり、ISSJは東京都内に拠点を置く民間の事業者の1つ。

第2次世界大戦直後、民間団体「日米孤児救済合同委員会」として、駐留軍兵士と日本人女性の間に生まれた子どもの国際養子縁組支援から活動をスタートした。国内も含めて成立した縁組は2000件を超える。

映画は、子育ての途中で実親に事情ができて子どもの託し先を探すケースだった。実際には、女性が予期せぬ妊娠をして、子どもを託すかどうかを悩みながら相談窓口を訪れることのほうが多い。また、生みの親が児相と民間あっせん事業者のどちらを選ぶかによって子どもの未来も左右される。

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