「余命1週間の母」を笑顔で見送った家族の結束

ハンバーグを食べコーヒーを飲んだ最期の日々

写真左から、守本早智子さん、看取り士の尾美恵美子さんと清水直美さん、守本さんの長女・彩子さんと、ベッドの玉津玲子さん(写真:守本さん提供)
人はいつか老いて病んで死ぬ。その当たり前のことを私たちは家庭の日常から切り離し、親の老いによる病気や死を、病院に長い間任せきりにしてきた。
結果、いつの間にか死は「冷たくて怖いもの」になり、親が死ぬと受け止め方がわからず、喪失感に長く苦しむ人もいる。

守本早智子(62)は、余命1週間と告知された84歳の母親を、病院から自宅へ引き取った。料理上手で、食べることが大好きな母が、点滴だけの病院生活で元気を失っていたからだ。在宅医療に加え、終末期の人と家族に寄り添う看取り士の支援も受けながら過ごした、2カ月半を振り返る。
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病院で「骨と皮」の母親を見て娘が固めた覚悟

奥のベッドで、84歳の玲子さんもコーヒーを飲みたいと手を上げている(写真:守本さん提供)

「コーヒー飲む人?」

三味線を製造販売する店舗奥のリビングで、守本早智子が職人や家族にそう尋ねた。手を挙げる職人たちの後方、和室8畳間の介護用ベッドで、84歳の実母・玉津玲子も黙って左手を挙げていた。

写真はそのほほ笑ましい場面を記録した1枚。2020年9月下旬ごろのものだ。

「母はいつも2、3口程度。それでも、みんなと一緒に飲みたがりましたね。私たち家族も自宅ではなく店舗で夕食をとり、焼肉でも鍋物でも、できるだけ母にも同じものを食べてもらいました」(早智子)

できれば家族が過ごすリビングに介護用ベッドを置き、終末期の人とだんらんを共有する。これは一般社団法人日本看取り士会が勧める、最後の時間の過ごし方でもある。母・玲子はそのベッドから家族などの会話に耳をすませ、夏には窓ガラス越しに花火を楽しんだ。

母親が余命1週間と告知されたのは同年8月初頭。約4年前にわかった病名は進行性核上性マヒ。脳内の神経細胞が減少し、嚥下や歩行障害が進行する難病だった。

「コロナ禍で面会禁止になって約半年ぶりに再会した母は、まるで骨格標本みたいでした。顔色は悪いし、目はよどみ、話すこともできなかった。誤嚥することが増えて食事を禁じられ、水の点滴だけでかろうじて命をつないでいたせいです。退院させることに迷いはありませんでした」(早智子)

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