交渉の準備を始める際に、まずは必要となる資料やデータを収集します。
現状把握のために必要となる最低限の情報に加えて、交渉をより優位に進めるために入手すべき情報も確認していきます。
•必ず収集すべき情報
・契約書/覚書
・詳細な仕様書
・取引に関する過去12カ月の実績データ
・過去の交渉経緯(前任者へのヒアリングなど)
・競合他社からの見積もり
・市況の単価相場と今後の傾向
・取引相手企業の情報
・取引相手にとってメリットがありそうな条件
・自社が譲歩可能な条件
過去の実績データ、他社の見積もりも活用
現状を正確に把握するために、契約書/覚書に加えて、詳細な仕様や制約条件も合わせて確認します。とくに、契約締結時に取り決めた各種条件が、現状の現場のニーズと合致しているのか、ズレているならどこがズレているのか、を確認していきます。
例えば、オフィスや店舗の賃貸借契約書の場合、現地視察やヒアリング、また近隣の賃貸相場を把握することで、現在の条件と今後のあるべき条件のギャップを分析できます。
一方で、物流の業務委託(3PL)の場合は、現場でのオペレーションも関連してくるため、過去12カ月分の配送実績や現場の生産性に関するデータを分析し、当初取り決めたタリフ表や料率の想定と運用実態がズレていないかを確認します。
例えば、当初は路線便でトータルの重量と距離で配送条件を取り決めていたが、その後、EC販売量が増加し、個別の小口配送が急増したというような変化です。本来なら小口配送分は路線便ではなく、宅配便のほうが割安ですが、当初の路線便の単価がずっと適用され続け、結果的に割高な配送費を支払い続けていることに気づいていないといった事例は珍しくありません。
最低限の現状把握だけでは、交渉を有利に展開できません。交渉を優勢に運ぶための追加情報や「交渉において自分に優位に働く要素」(これを「交渉カード」と呼びます)が必要になります。例えば、他社からより魅力的な提案や見積もりがあれば、直接的に取引先との条件交渉に生かすことができます。
取引先企業との取引条件の全体を捉える場合、商品やサービス自体の価格や仕様がすべてではありません。実際に取引先となるサプライヤー企業と正式に契約書や発注書を交わす際には、取引上の制約条件や将来的に追加で支払いが発生する可能性がある費用の諸条件が記載されています。例えば、「契約期間」「途中解約とその違約金」「損賠賠償」に関する条項は、どの契約書においても必ず記載されていますが、事業経営の観点から潜在的に発生しうるすべてのリスクは必ず自社でマネジメント可能な範囲に留める必要があります。
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